【強みの技術で業界の課題解決】三菱電機が建設領域開拓へ 初弾は「AI配筋検査システム」 | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【強みの技術で業界の課題解決】三菱電機が建設領域開拓へ 初弾は「AI配筋検査システム」

 三菱電機が建設施工領域をターゲットとした事業展開に踏み出している。初弾のソリューションとして2月に「AI配筋検査システム」のサービス提供を開始。今後、「建設業向けソリューションを増やし、建設施工領域のソリューション全体で2030年ごろまでに売り上げ100億円を目指す」(高原健ビジネスイノベーション本部ビジネスイノベーション統括事業部営業企画担当マネージャー)という意欲的な目標を打ち上げている。

左から高原氏、平氏、石神氏、宮本氏


 同社は、20年4月に「ビジネスイノベーション本部」を設立した。従来の事業本部の枠外で新事業創出などを目的とする部署で、「『社会課題の解決』をキーワードに、自社の強みを課題解決に生かせる分野をターゲットとする」(石神直樹同本部ビジネスイノベーション統括事業部長)ことをポリシーに置く。この中で、「自社の画像解析・画像処理という強みを、建設業の慢性的な担い手不足という課題解決に生かせる」(同)と判断して生み出したのがAI配筋検査システムだ。

AI配筋検査システムを使った検査のデモ


 ステレオカメラ付きの検査端末とクラウドサービスで構成する。事務所などのパソコンでクラウドにログインして検査項目や測定個所・項目を編集し検査項目をダウンロード後に、検査・立会者の登録や設計情報の取り込み、検査対象の事前設定、精度チェックを済ませ、現場で検査する設計情報を選択して検査対象を設定、黒板設定、撮影、計測範囲の指定、計測、検査履歴の確認、精度チェックという流れで、最後に計測結果をクラウドにアップロードすれば帳票が自動生成される。

 画像上の2点指定による長さ計測や、複数画像をつなげて長さを合算する分割撮影機能も備える。撮影した範囲の鉄筋検出率は100%を誇り、下段の鉄筋が映り込んでいても最表面の鉄筋だけを検出する。マーキングやスケールの設置といった事前準備が不要になるほか、複数人を要した検査作業も1人で完了する。準備から計測、報告書作成まで5人工で180分かかっていた作業時間を3人工75分まで60%短縮できる。

製品外観


 独自のAI(人工知能)技術「Maisart」(マイサート)を活用して「画像から、鉄筋の太さや鉄筋間隔が設計値と合っているかという“検査”ができる」(宮本高明同本部ビジネスイノベーション統括事業部プロジェクトリーダー)という画像解析・処理技術が最大の強みだ。端末重量はステレオカメラが付いていながら2.1㎞と取り扱いが苦にならない重さを実現。周囲温度マイナス10度から40度まで、1.2mの高さからの耐落下性能も備える。製造を担当する三菱電機エンジニアリングの平謙二メディアシステム事業所副事業所長が「耐環境パソコンをイメージし、現場のニーズに合ったサイズ感、重さにした」とするように、メーカーとしての製品設計ノウハウも詰まっている。

 同社と鹿島、三菱電機エンジニアリング、建設システムの4社で現場検証などを進めてきたが、図面と撮影場所の重ね合わせ機能の追加や検査・対象鉄筋の種類の拡大などのリクエストが現場側から挙がっており、「可能な限り、改善・拡張してバージョンアップしていきたい」(宮本リーダー)とさらなる進化を約束する。

 この姿勢は、サービスの販売形式にも表れている。月・台当たりのサブスクリプション方式で、製品の売り切りが多いメーカーとしては異例の販売形式だ。高額製品の購入が難しい企業への配慮だけでなく、「現場からのニーズを把握しきれていない中、使ってもらいながら精度を上げるために新しい販売形式にした」(宮本リーダー)という。

 次のターゲットは、配筋検査の前後のプロセスであるコンクリート工の領域でのソリューション開発で、着々と準備を進めている。「建設業界は一定の投資需要があると認識しているが、担い手不足が他業界より深刻で、ICT化も遅れている。この社会課題解決をサポートできるのではないか」(石神部長)と今後も建設施工領域を1つの有望なターゲットとしてビジネスの拡大を狙う。



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