【"よりよい社会のきっかけに"】クラウド型サービス「b-platform」&「BEAMap」新始動 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【”よりよい社会のきっかけに”】クラウド型サービス「b-platform」&「BEAMap」新始動

 山下PMCは、建物のあらゆる情報を一元管理して企業の資産として有効活用できるプラットフォームと、建物規模と不動産事業収支を連携してワンストップで自動算出する2つのクラウド型サービスを始動した。システム開発で中心的役割を担う同社の木下雅幸取締役専務執行役員は、「ユーザー目線を徹底した」と強調。新たなサービスの提供は「きっかけづくり」とし、より良い建築や社会・まちづくりの創造を最終目標に据える。多様な知恵の集積で建物の経営、管理・運営の仕組みを変革する共創のツールとして「さらなる進化を目指す」と語る木下氏にサービスの狙いなどを聞いた。

取締役専務執行役員 木下雅幸氏


 クラウド型のプラットフォームとして、情報を「あつめて」「つなげて」「活用する」をコンセプトに開発し、1日からサービスを始めた「b-platform」(ビー・プラットフォーム)は、建物のあらゆる情報を360度写真にひも付けて一元管理できる。直感的なインターフェースを採用し、専門家以外でも容易に情報にアクセスできるのが大きな特徴だ。

 許認可申請、図面、コスト情報、改修履歴、不具合情報、定期報告など長期間にわたって積み重ねられる大量の図面や資料のデータを蓄積していくことで、情報の散逸防止と管理の負荷削減を実現する。建物に関するさまざまな情報が分断され、企業の資産として有効活用されていなかったことから、これまでにない新たな仕組みとして構築した。

 木下氏は、「建物を管理・運営するユーザーは建築業界の人とは限らない。ユーザー目線で考えた時に、何が必要かを徹底的に考えた」と振り返る。生命保険会社でアセットマネージャーとして約120棟の施設を管理した経験があり、図面を始めとするデータ管理の煩雑さは身をもって理解していた。「建築のプロではなくても、そこにさえ行けばすべての情報にアクセスできるのが大きな強み。10年後、50年後にも情報共有できる」。建築業界、不動産業界、ビルオーナーなどがワンストップでつながるツールの構築には、かつての経験が生かされている。

 サービス開始後、「かなりの不動産を持っている顧客からもポジティブな反応をいただいている」と滑り出しは上々だ。今後2-3年で2000棟の登録を目指す。

b-platformは360度写真をインターフェースにしているため、直感的に情報にアクセスできる


 一方、12日には、建物の自動規模算出とそれに応じた不動産事業収支を連携させ、ワンストップで実現するクラウド型サービス「BEAMap」(ビーマップ)の提供も始めた。

 土地の有効活用に向けて事業用建物の建設を検討する場合、建築、不動産、金融などさまざまな専門知識が必要となるが、各専門家が分散しているため、初期の検討に多くの労力を要し、タイムリーな投資判断を逸するケースも少なくない。

 BEAMapは、事業用建物の建設検討で必要な計画地での建築法規制を満たす建物規模の算出(ボリューム検討)、周辺の賃料相場把握、事業収支計画作成を、建築やファイナンスのプロでなくても、簡単な操作によって一定の精度で自動算出することができる。

 フォームの項目に従って、敷地概要や建物条件を入力すれば建築可能な建物ボリュームを自動で算出し、ボリューム検討で得た建物規模から事業収支計画を作成する。複数の検索パターンで条件にあった賃料相場も簡単に検索できる。今後は、自動算出した複数パターンを一覧表示して比較できるようにする機能の追加も検討している。

 建築法規制の検証による建物規模検討だけを担っていた建築士が、賃料相場把握から事業収支計画作成までをワンストップで提供できるため、サービス価値の向上が期待できる。サービスを使えば、従来3日ほどかけていた建物ボリュームの検討時間が大幅に削減され、設計事務所のスタッフなどはより創造的な仕事に注力することができる。

 山下PMCが受け入れているANAエアポートサービスからの出向社員が実際に操作した結果、約1時間で作業が完了した。木下氏は「建築のわからない人でも直感的に操作できるようにつくったつもりだったが、想像以上の結果だった」と、使い勝手の良さに自信を見せる。

 「設計者にしかできないと思われている部分に周辺分野のアイデアが加われば、設計者の刺激にもなり、新たなイノベーションをもたらすきっかけにもなる」。木下氏は、作業の効率化だけではなく、法規などの専門的な知識がない不動産、金融関係者などがシステムを介して事業戦略に参画することで生まれる副次的な効果にも期待を込める。

BEAMapの3Dボリューム確認画面イメージ


 2つのクラウド型サービスは、ファーストステージに過ぎない。より良い建築やまちづくり、社会の創造という最終目標の達成に向けて木下氏は、「建築をもっと楽しくして、世の中の人が喜んでくれるサービスを提供していきたい」と力を込める。



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