【創業の地で社会貢献】深松組が全国初の取り組み 信託方式による発電・水道事業とは? | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【創業の地で社会貢献】深松組が全国初の取り組み 信託方式による発電・水道事業とは?

 深松組(仙台市、深松努社長)は、創業の地である富山県朝日町笹川地区で全国初となる信託方式による小水力発電事業と簡易水道事業に取り組んでいる。発電した電気はFIT(固定価格買取制度)を活用して北陸電力に売電し、その収入で老朽化した水道施設の更新費をまかなう。過疎化や高齢化が進む地域にとって、社会インフラの維持が大きな問題となっている中、課題解決の一手として注目される。深松社長は「仕事を通じて当社ゆかりの地域を守れることは、建設業を営んできた者として冥利(みょうり)に尽きる。事業を成功させて地域社会の繁栄に貢献したい」と力を込める。

深松社長


 同社は笹川地区出身の故・深松幸太郎氏が1925年3月に創業。ことし96周年を迎えた。現在も同町に北陸支店を置いている。

 同地区には現在107世帯、約250人が暮らす。水道は簡易水道方式を採用し、笹川自治振興会が管理している。施設は老朽化が進んでおり、一昨年は水道管7カ所が破裂し、その度に断水を余儀なくされた。施設の更新には約3億円が掛かり、費用を捻出するのは困難だった。

 「本家を訪ねる度に水道の話を聞き、何か良い方法はないかと考えていた」と深松社長。そこで、信託方式による地域資産の活用で実績のある、すみれ地域信託(岐阜県高山市)や地域住民、北陸銀行などと協議を重ね、全国に類をみない事業スキームを構築した。

 同スキームのポイントは、▽売電収入で費用確保▽倒産隔離機能を利用▽地域の雇用創出–の3つ。FITによる売電収入は年間4000万-5000万円を見込んでおり、約20年間で小水力発電所の建設費と水道施設の更新費をまかなう考えだ。水道の更新費用は、朝日町が一部助成する。

 また、信託の倒産隔離機能を利用することで、委託者の倒産の影響を回避できる。「万が一、当社が倒産しても事業は20年間継続され、安全・安心に水道を使うことができる」と話す。

 さらに水力発電の管理業務一式を地元法人に発注し、地域に新たな雇用を創出する。

 小水力発電は、発電所の建設地約1㎞上流から取水し、約90mの落差を利用して水車を回す。最大出力は196.8kW。約400世帯分の電力をつくれるという。4月26日には現地で安全祈願祭が行われ、2023年6月の売電開始、25年春の水道工事完成を目指して本格着工した。

 プロジェクトの推進に当たっては「子どものころに遊んだ笹川は、憩いの場所だった。この笹川が地域に恵みをもたらす川になる。水力発電は川の流れがある限り継続できる。SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向け、持続可能な地域の未来を創造していきたい」と強調する。

笹川の取水予定地点


 一方で「笹川地区と同じようにインフラの維持に悩む地域は多い。地域の実情をよく知る地元建設業と資金力のある大企業がうまくマッチングすれば、さまざまな課題を解決できると思う。要望があればノウハウを提供したい」と他地域への広がりにも期待を寄せる。

 同社は水道工事が完成する25年、創業100周年の節目を迎える。幸太郎氏が掲げた社是『信用を重んじ建設事業を通じて地域社会の繁栄に奉仕する』を実践し続ける同社にとって、今回のプロジェクトはエポックメイキングな事業になりそうだ。



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