【東北初】アクアイグニス仙台 地中熱や排水熱などを組み合わせた省エネ設備を温泉棟に導入 | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

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【東北初】アクアイグニス仙台 地中熱や排水熱などを組み合わせた省エネ設備を温泉棟に導入

 深松組(仙台市、深松努社長)などは、同市東部沿岸部で整備を進めている「アクアイグニス仙台」の温泉棟に、地中熱や排水熱などを組み合わせた東北初の省エネ設備システムを導入する。特に、建物の地下にスリンキー式コイルを敷設して地中熱を回収するシステムの採用は、全国的にもめずらしいという。8日に開かれた内覧会の席上、深松社長は「プロジェクト全体を通して持続可能な地域の未来に貢献していきたい」と強調した。

温泉棟の地下に敷設されたコイル


 アクアイグニス仙台は温泉と食の総合リゾートとして、深松組などが設立した仙台reborn(深松社長)が東日本大震災で被災した沿岸部の防災集団移転跡地に整備する。2020年10月に着工し、22年4月のオープンを目指している。

 メインの温泉棟はRC造2階建て延べ3153㎡。エネルギーの“地産地消”を目指し▽地中熱回収▽排水熱回収▽災害時対応燃料備蓄▽発電機排熱回収▽排ガス回収▽浴室排気熱(湯気など)回収–に取り組む。

 このうち地中熱は、温泉棟の地下3.8~4.6mに1650㎡分のスリンキー式コイルを敷設して地中熱を回収し、蓄熱槽に熱を供給。温泉や床暖房の加温、野菜・果物ハウスの土壌温調などに活用する。地中熱交換器は密閉式で環境汚染の心配がない。

 また、浄化槽の放流槽に流入する排水熱を熱源としたヒートポンプを導入するほか、非常用発電機の排熱利用、浴室の湯気からも排気熱を回収する。

 これらはエアコンなどの空気熱源ヒートポンプが使用できない外気温マイナス15度以下の環境でも利用可能で、放熱用室外機がなく、稼働時騒音も非常に小さいといったメリットがある。

 CO2排出量は油たきボイラーを使った場合に比べて53%削減、ランニングコストも年間約4000万円から2100万円程度に縮減できるという。

 施設は温泉棟のほか、産直レストランが入るマルシェやスイーツ、ベーカリー、イタリアンレストランなどの各棟で構成。設計はARTSとBAU建築設計室、深松組の3者が担当。施工は温泉棟本体が深松組、マルシェ棟などの建築は阿部和工務店・中城建設JVが担っている。建設地は同市若林区藤塚字松の西33-3ほか。

 深松社長は「仙台市の復興はハード面がほぼ終わったものの、心の復興はこれからであり、津波で被災した藤塚ににぎわいを取り戻したい。SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて地中熱などの回収によるエネルギーへの貢献、200人以上の地域雇用、農業・マルシェによる環境への貢献に取り組んでいく」と話した。

深松社長



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