【最小離隔380mm】先行トンネルとの"超近接施工"に挑む 横浜環状南線・桂台トンネル工事 | 建設通信新聞Digital

5月15日 水曜日

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【最小離隔380mm】先行トンネルとの“超近接施工”に挑む 横浜環状南線・桂台トンネル工事

いよいよ10月からセグメント外径15mという国内最大級の大断面シールドトンネルの掘進がスタートすることになりそうだ。舞台となる現場は「横浜環状南線・桂台トンネル工事」。大迫力のシールドマシンが約1.3㎞を“往復掘進”する。施工を担う大成建設・フジタ・錢高組JVが最大の難所となる先行トンネルとの最小離隔380mmという“超近接施工”に挑む。

桂台トンネル工事は、横浜横須賀道路の釜利谷ジャンクションと国道1号を結ぶ横浜環状南線の長さ約8.9㎞の一部となる。シールドトンネル区間の約1.3㎞と上郷地区の約0.35㎞(開削ボックス、橋梁下部工事など)で構成する。

2015年4月の着工から約5年。東側から橋梁下部工事(10基)、擁壁工事、ボックスカルバート、トンネル立坑2カ所(発進到達立坑、回転立坑)の施工を進めてきたが、それらの構造物が完成。いよいよ10月から工事の中核と言える大断面シールドトンネルの掘進に入る。

昨年7月から750t級と200t級のクローラークレーン2台を使用して組み立てを進めてきた外径15.28m、長さ11.85m、重さ2350tの大迫力のシールドマシンは既に発進立坑に堂々とスタンバイ。国内最大とされる東京外かく環状道路の外径16.1mに次ぐ、国内最大級の大断面シールドマシンが発進の“合図”を待っている。

外径15メートルの大迫力シールドマシンが発進の合図を待っている

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 現場代理人を務める松村英樹作業所長が「これだけ大規模な工事に携われることは技術者冥利(みょうり)に尽きる」と話すように、この工事の最大の特徴は大断面かつ近接施工となる点だ。

松村所長

実際に約1.3㎞のシールドトンネル区間のうち、約400mで最小離隔(セグメント間)が380mmとなる“超近接施工”は技術的な難易度が高い。

この現場ならではの工夫が求められるからこそ「シールドマシンの側面から照射する電磁波レーダーを活用する。(上り線として構築した)先行トンネルとの離隔をリアルタイムに計測することで近接施工に対応していく」(松村所長)という。

レーダーによる離隔計測を補完する地山探査装置を搭載するなど、多くの工夫を施しながら、施工を進めるトンネル構築に「関係者の総力を結集していく。こうした工事を経験することで技術力を維持・継承していかなくてはならない」(同)と力を込める。

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 周辺環境への配慮にも余念がない。取り組みの1つが発進ヤードに設置する長さ99m、幅27m、高さ15-18mの大型の防音ハウスだ。

この防音ハウスの設置によって周辺への騒音を大きく低減。昼夜による施工を実現する。いわゆる本掘進ともなれば、1日当たり12mほどのスピードで掘り進めていく計画だという。

発進ヤードに大型の防音ハウスを設置して周辺への騒音を低減

掘削によって1日に3000m3ほど発生する土砂の搬出計画も工夫。東側に隣接する他の工区で整備した山岳トンネル(パイロットトンネル)を効果的に活用する。

坑内から坑外(既に整備した橋梁下部工区間から他工区のトンネル)へとベルトコンベヤーを通すことで、ダンプトラックによる地上部を使った土砂の運搬を回避。約1.8㎞先にある釜利谷ジャンクション周辺の仮置き場まで効率的に土砂を運ぶ。

工事車両の台数を低減することで、住宅街に近接する施工条件に的確に対応していく。

坑内から坑外、隣接工区のトンネル内にベルトコンベヤーをはわせて掘削土砂を搬出

■ひと口メモ
例年、発注者であるNEXCO東日本と連携して、近隣小学校の生徒を対象に現場見学会を開催。現場を見学した生徒たちから「高速道路ができるのが楽しみ」「早く(完成した)トンネルを通ってみたい」「シールドマシンの大きさにびっくりした」といった感想が記された手紙や寄せ書きをもらっているという。

現場を見学した生徒たちを対象に、工事現場や高速道路をテーマにした絵画コンクールも実施。先生に選んでもらった絵を「よこかんみなみ絵画展」として、現場事務所の前や現場の仮囲いに展示するなど、地域との交流にも力を入れている。

地域交流の取り組み 「よこかんみなみ展」

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