【BIM2021】エーアンドエー データプラットフォーム機能を進化 | 建設通信新聞Digital

5月10日 金曜日

B・C・I 未来図

【BIM2021】エーアンドエー データプラットフォーム機能を進化

 エーアンドエーが提供するBIMソフトの最新版「Vectorworks2021」は、さまざまなソフトウェアで作成するBIMデータのプラットフォームとして進化を続けている。TwinmotionやRevit、木造プレカット生産CADの標準フォーマット「CEDXM」(シーデクセマ)などとのデータ連携に力を入れ、コラボレーション機能を向上させている。2次元・3次元CADから高度なBIM連携まで、柔軟な活用を可能にするVectorworksの最新動向を紹介する。

■設計意図やデザインの共有をより簡単に
 コラボレーション機能の強化により、BIMソフトの中でも評価の高い表現力にさらに磨きをかけている。ビジュアライゼーションツールとしてBIMとの連携が急増している「Twinmotion」への対応として、Unreal Datasmith取り出し機能を搭載し、設計意図のアウトプットやプレゼンテーション機能を強化した。Vectorworksのネイティブデータを受け渡し、ゲームエンジンによるリアルタイムレンダリング機能などを活用できる。

「Twinmotion」とのデータ連携


 多数のユーザーを抱えるオートデスク「Revit」へのデータ取り出し機能も強化し、Revitとデータ交換するオブジェクトや3次元モデルを向上させた。壁、ドア、スラブ、地形、植栽などさまざまな3次元オブジェクトの品質を大幅に改善することでRevitユーザーとのコラボレーションを高めた。Revitが整備している膨大なライブラリーを取り込みVectorworks側で高精度に再現することもできる。

 またVectorworksの都市計画/造園設計向け製品「Landmark」の一部の機能を「Architect」でも使用できる。計画地周辺の測量データや等高線データを読み込み、建設地の地形を正確に再現することで、建築とランドスケープをワンストップで設計できるのも強みだ。

 佐藤和孝エーアンドエープロダクトマーケティング課課長は、「ソフトウェア間の連携に対するニーズは世界的な潮流となっている。インテリアデザイナーがVectorworksで設計したデータをRevit上で簡単に共有したり、測量データの紐付いた地形データを取り込んだ上で建物を設計するなどユーザーの声を反映させた」とVectorworks2021における機能拡充の方向性を語る。

■木造住宅のワークフローを変革
 これまで力を入れてきた日本の在来軸組工法に対応する“木造BIM”の取り組みも加速している。意匠CADと木材のプレカット生産CADの相互連携の標準ファイルフォーマットCEDXMとVectorworksのデータ連携が実用段階に入った。設計からプレカット生産までデータを一貫して活用することで、「木造住宅のワークフローを大きく変える」ことができる。

「CEDXM」取り出し(開発中)


 従来はプレカット工場に送った設計データをオペレーターが専用CADに手動で打ち直していたが、CEDXMでデータ変換することで設計データをダイレクトにプレカット工程で利用でき、作業時間とコストの大幅な縮小が可能になる。さらにCEDXMは、変換した設計データを地震時の建物の揺れをシミュレーションするソフト「wallstat」で動かすことができる。

■パソコン上で振動実験をシミュレーション
 wallstatは木造軸組構法の住宅を対象とする数値解析ソフトで、京都大学生存圏研究所、国土交通省国土技術政策総合研究所、建築研究所、東京大学大学院の研究成果を元に製作した。

 振動台を用いた実大実験や応答解析、地震時の挙動などに関する研究機関の豊富な知見を活用し、建物全体の地震動時の損傷状況や倒壊可能性を評価する。これまで困難とされてきた木造住宅の倒壊挙動を再現し、パソコン上で数値解析モデルを作成し、振動台実験のように地震動を与えた場合の挙動をシミュレーションすることで、変形の大きさや倒壊の有無を視覚的に確認できるのが特徴だ。

 佐藤課長は「WindowsとMacのクロスプラットフォームに対応したBIMソフトでは初めて、CEDXMとのデータ連携が可能になる。現在はベータ版が完成し、今夏にもまずはwallstat向けとして提供を開始する予定だ」と先を見据える。



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら