【BIM2021】奥村組 FM-BIMで発注者メリットを | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【BIM2021】奥村組 FM-BIMで発注者メリットを

 奥村組は、自社の設計施工で全面リニューアルした技術研究所(茨城県つくば市)の管理棟と、新築した室内環境実験棟にFM-BIMを本格導入した。福井コンピュータアーキテクトのBIMソフト「GLOOBE」のFM連携を活用し、長期修繕計画やメンテナンスの効率化、維持管理費用のコストダウンなどに取り組んでいる。自社案件をケーススタディーとして最適な運用スキームとFMモデルの確立を目指す。

FM-BIMフロー図


 同社のFM-BIMの取り組みには技術研究所、建築設計部、施工部門、BIM推進室のほか設備工事会社が参画している。設計、施工情報をもとにBIMのベースモデルを構築し、そのデータをFMシステム(東京都文京区)の施設台帳管理システム「FINE-WEBS」と長期修繕計画システム「FM-Refine」に取り込み、データ連携して活用する。

 ポイントは、BIMの属性情報をFM側のシステムに自動割り当てするGLOOBEのデータマイニング機能だ。すべてのBIMオブジェクトに個別IDを割り当てるソフト独自の仕組みを生かし、FMで使用するBELCAの832項目のデータ分類に、BIMオブジェクトを自動的に割り当てる。約70%を自動分類し、残りを手動入力するが、そのときに割り当てルールを作成することで今後の完全自動化につなげる。

 FM-Refineは、長期修繕の計画にあたって、修繕や更新時期を調整しながらシミュレーションすることができ、年度別の費用に偏りをなくすなど、計画を最適化することができる。FINE-WEBSは、施設台帳とGLOOBE-Model-Viewerを連携させることで、ビューワ側から探したいオブジェクトをフィルタ機能で絞り込んだり、台帳の一覧を選択すると該当するBIMモデルが赤く反応して配置位置を確認できる。

 ICT統括センターイノベーション部BIM推進室室長の脇田明幸氏は「発注者がBIMのメリットを直接得られるのは維持管理の段階に入ってから。FM-BIM活用により5~10%のランニングコストを低減し、メリットにつなげたい。BIMに投資するコストを超える効果を感じてもらうのが目標だ」と話す。

 また実際に建物を管理する人にも使いやすいユーザーインターフェースを用意し、「これまでは何かあると竣工図や引き渡し書類のファイルなどを抱えて管理者と改修工事業者等が現地に駆けつけ、それらの書類と照らし合わせていたが、FM-BIMを利用することで事前にクラウド上で仕様書や工事履歴などの情報を共有できるため大幅な効率化につながる」と期待する。



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