【素材NOW】大建工業、ラワン合板代替へ新素材/北海道産の針葉樹トドマツ | 建設通信新聞Digital

4月24日 水曜日

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【素材NOW】大建工業、ラワン合板代替へ新素材/北海道産の針葉樹トドマツ

 

  東南アジアで乱伐による枯渇が懸念されている広葉樹のラワンは、合板の原料として日本でも消費している。その量はラワン合板で年間約26万m3という。このラワン合板を国産材を原料とする新素材によって代替できないかと大建工業が検討を進めている。目標は2024年度中の事業化、生産開始とした。新素材の狙いと構想について、小谷哲也広報部次長と福知義久新素材事業準備室副室長に聞いた。

 

トドマツ原木



 

 福知副室長は「ラワン合板は厚みによって用途が違う。これまで代替が進んでいなかった厚みは6mmから2.4mmほどの中厚物や薄物と呼ばれる種類で、主な用途はポリ合板の下地材だ。ポリ合板は家具や壁材の原料に使われる」と説明する。ラワンは強度と寸法安定性を出しやすい特性があって、これをほかの素材で出せないことが代替の課題になっていたが、大建工業は北海道産の針葉樹トドマツを使って代替を目指す。
 トドマツで代替する意味について、小谷次長は「合板の原料として伐採されている東南アジアの広葉樹の保護となる。国産材活用やCO2の固定化というメリットもある」とSDGs(持続可能な開発目標)面を強調する。CO2の固定化は「東南アジアから木材を輸入することは、現地で吸収された炭素を輸入しているような状況だ。それを国内の木材で置換すれば、カーボンニュートラルに貢献できる」(福知副室長)とする。

 

福知副室長

◆年間4.6万tCO2削減

  

 ラワンに関連する炭素はどの程度の量か。松江正彦国土交通省国土総合政策研究所環境研究部緑化生態研究室室長の発表によれば、木材のCO2固定量は、木質部乾燥重量に1.83をかけた重さとなる。ラワン1m3当たりの乾燥重量は平均すると約500kgで、CO2約915kg分に当たる大気由来の炭素がラワンに含まれている。
 大建工業は、新素材で年間約5万m3の生産を想定している。この全量でラワンを代替して、5万m3のラワン輸入を減らした場合、CO2換算で年間約4万6000tを減らすことになる。
 ラワンは広葉樹で、新素材の原料・針葉樹とは違いがある。「針葉樹は、木目が粗く立っているため、強い部分と弱い部分のムラが大きく、平滑性を出しにくい。節が多く、加工後に塗装やシートを貼る時の妨げになりやすい」(福知副室長)とし、樹種の違いを乗り越え、現状のラワンと同等の品質やコストで合板素材としての採算性を確保することが、事業化への課題となっている。


 

◆コスト面で有利な点も

 

 一方で、国産の針葉樹にはコスト面で有利な点もある。小谷次長は「ラワンは輸入のため値段の上下が激しい。国産材の方が原料の価格が安定している」と指摘する。
 新素材では原木のトドマツを切片にしてから成形し、ラワン材を代替できる平滑性や寸法の安定性を付与する。大建工業は既に素材事業の中で木質資源を活用する素材を生産・販売しており、新素材が事業化されれば新たなラインアップとして加わる。同社の既存素材の中には、製材端材などを繊維にまでほぐしてから板状に成形して床材や建材の基材とするMDF(中密度繊維板)や、丸太を切削した単板を繊維方向にすべて平行にして積層・接着し構造材などに使用するLVL(単板積層材)がある。新素材は、加工の細かさでMDFとLVLの間に相当する。
 事業化について、2024年度中の生産開始を当面の目標として、試作品による市場調査などを通じて事業性を精査する。生産規模を含む事業計画策定や工場立地、主要設備の選定、販路なども同時に精査する。最終判断は21年度末を予定する。
 工場は、原料となる木材の集材体制や雇用などを踏まえ、北海道旭川市付近を最終候補地として調整中。投資規模は工場建屋と設備を合わせて約70億円、雇用は40-60人を見込む。



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