【経営軸線・エステム建築事務所】BIMから積算ソフトへ データ移行支援サービスが好評 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【経営軸線・エステム建築事務所】BIMから積算ソフトへ データ移行支援サービスが好評

 1989年の創立以来、大阪、東京、浜松、名古屋を拠点に建築積算業界で着実にシェアを伸ばしているエステム建築事務所(大阪市、斉藤裕亮代表)。積算やコストプランニングのほか、建築技術者に特化した人材紹介事業も手掛けている中で、春から新たにBIMから積算ソフトへのデータ移行支援サービスを開始した。

(左から)事業統括本部の川島麻衣氏、糸川執行役員副代表、斉藤代表、草苅DX推進室長、中村取締役副代表

 BIM元年と言われた2009年から12年が経過し、浸透しつつあるBIMだが、BIMソフトと積算ソフトとの連携は依然多くの課題を抱えている。斉藤代表は「当初思い描いていたBIMによる作業の劇的な効率化はまだ実現できていない」と説明した上で「当社では多くの人材を割き、BIMと積算の橋渡しをお手伝いさせていただき、BIMのさらなる普及、建設産業の効率化に取り組んでいきたい」と意気込みを語る。

◆BIMモデルを解析・検証、積算ソフトの形式に整備
 BIMから積算ソフトへのデータ移行支援は、設計事務所やゼネコン設計部が作成したBIMモデルを解析・検証して数量データを抽出し、積算ソフトに対応した形式に整えるサービスで、積算ソフトと連携しやすいBIMモデルテンプレートの作成も行っている。

 BIMソフトでは『Revit』『Archicad』『GLOOBE』、積算ソフトでは『HEΛIOΣ』『FKS』『すけるTON』などに対応し、可能なデータ修正の組み合わせは9パターンにも及ぶ。事業は20年11月に大阪本社内で立ち上げたDX推進室所属の5人が中心となって担当し、手作業で行っている。

DX推進室のオフィス


 BIMモデルのデータを積算ソフトに入力するためにはファイルの変換が必要で、それを行ったとしても、引き継がれる数量データはごく一部に限定される。 500㎡程度の建築物を想定したArchicadのサンプルモデルを使用した場合、同社の移行支援作業を介せば5倍ほどの数量データを引き継ぐことができるという。

 草苅秀和DX推進室長は、「建築物の規模が大きくなるほど欠落するデータは膨大になり、積算領域では2次元図面から数量を取り出す作業に大変な労力をかけられているのが現状。われわれのデータ移行支援により、積算料の抑制はもとよりBIM本来の目的である設計から施工まで一貫したデータの活用の実現に1歩近づくことができる」と強調する。

◆設計事務所やゼネコンから関連業務を受注、総合的BIM-積算コンサルティングも視野
 既に大手建築設計事務所やゼネコンからデータ移行支援などBIMに関連した業務を受注している。糸川英貴執行役員副代表は「当面は当社で積算業務を受注している案件での移行支援が中心になるが、他社で積算するものについても対応していく。徐々にターゲットを広げ、事業を軌道に乗せたい」と先を見据える。草苅室長も「まだBIMが導入できていないという中堅設計事務所などにも提案し、導入の一助になれば」と話す。

ArchicadのサンプルBIMモデル


 データ移行支援以外にも、BIM設計者向けの積算領域についての設計マニュアルの作成を依頼されるケースも出てきており、 総合的なBIM-積算コンサルティングとしてさらなる発展の可能性も見えてきている。

 中村茂夫取締役副代表は「意匠設計の段階でもう少し工夫すればBIMと積算の連携はもっとスムーズになる。この事業が設計者の意識を変え、建設生産システムの効率化に一役買うことができればうれしい」とし、「当社はBIMソフトと積算ソフトの両方に精通した人材を多く抱え、ノウハウもある。その強みを生かして事業を拡大し、業界のBIM普及を下支えしていきたい」と力を込める。



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