【クローズアップ】適正地盤構造設計と宮本教授が「マスクチェンジャー」開発 熱中症対策に寄与 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【クローズアップ】適正地盤構造設計と宮本教授が「マスクチェンジャー」開発 熱中症対策に寄与

 夏本番を前に、建設現場でのコロナ対策は悩みどころだ。飛沫防止効果が高いとされる不織布マスクは顔との密着度が高く、酷暑のもとでは作業中に熱中症を引き起こす懸念もある。そんな中、大阪のスタートアップ経営者らが市販の不織布マスクを改良、フェイスシールドやマウスシールドのように使用できるユニークなマスクを開発した。

宮本教授(左)と、大山代表


 商品名は「マスクチェンジャー」。手がけたのは、木造住宅の構造設計や地盤改良を手がけるスタートアップ・適正地盤構造設計(大阪市)代表の大山雅充氏と、阪大名誉教授で現在福井工大教授の宮本裕司氏だ。

◆1枚で4種類の使い方ができる
 一見普通の不織布マスクだが、マスク内側に取り付けられた形状記憶ワイヤーをV字に曲げることでマスク下部にすき間をつくり、呼吸しやすい状態に変えることができる。マスク上下部のゴムひもは脱着でき、ゴムひもの位置をずらすことでフェイスシールドやマウスシールドのようにも使用できる。「状況に応じ1枚のマスクで4種類の使い方ができ、市販の不織布マスクだけを交換し繰り返し使える」(大山氏)のも特徴だ。

マスク上下部のゴム紐を脱着、ゴムひもの位置を変えることでフェイスシールドやマウスシールドのように使用できる


 そもそも医療畑ではない2人がなぜ、マスク開発を手がけたのか。大山・宮本両氏がタッグを組んだプロジェクト「AI活用による木造構造計算と地盤改良の設計及び作図の自動化」が2020年8月に国土交通省の「住宅生産技術イノベーション促進事業」に採択された。投資会社の支援を受け実用化に向け準備を進めていた矢先にコロナ禍が拡大、プロジェクトはペンディング状態になってしまう。

 そのような状況下で、大山氏が新たに着目したのがマスクだった。防護服を着て汗みどろになりながら患者に対応する医師や看護師たちの様子をテレビで見て「建設現場の空調服のようなマスクが作れないか」と思ったのがきっかけとなった。不織布マスクを始め市販の材料を使い、試行錯誤の末たどりついたのが「マスクチェンジャー」だった。

◆現場作業者の負担を減らしたい
 「現場は冬場でも息が荒くなることが多く、マスクを着けない作業員も少なくない。建設業に携わってきた人間としてとにかく息苦しくないマスクを作り、役に立ちたかった」と大山氏。宮本教授も「素材やデザインのバリエーションはあっても、本当の意味で機能性にこだわったマスクはこれまでなかった」とマスクチェンジャーの革新性を強調する。

 施工現場でのテストも行った。西田工業(京都府福知山市)の協力で同社の施工現場でモニタリングしたところ「息苦しさがなく、風の影響も受けにくい」と高い評価が得られた一方、「丸洗いできるほうがありがたい」「ウレタン素材のマスクも作ってほしい」といった新たなニーズも寄せられたという。

マスクチェンジャーの装着例。マスクの下部にすき間ができ、呼吸しやすい状態になる


 特許出願済みで25日から自社サイトでの発売を予定。希望小売価格は、1枚当たり1200円(税込み)。現在は大山氏の知人の企業に製造を依頼しているが、ほぼ手作りに近いかたちでの製造になっているため、「マスクメーカーや販売会社とコンタクトをとり、より安価に熱中症と感染防止対策の両立ができるマスクとして社会に流通できれば」(大山氏)と考えている。



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