
左から福元設計長、谷口所長、春井副所長
同社が1つのモデルデータからプロジェクト関係者が情報を出し入れするワンモデルBIMに取り組んだのは2017年のことだ。オートデスクのBIMソフト『Revit』を標準システムに位置付け、クラウド『BIM360』上でデータを共有する枠組みも整え、ワンモデルBIMの導入を推し進めてきた。21年度からは設計・施工の全案件で導入することも決まった。
大阪本店はワンモデルBIMの先導役として、19年に竣工した大阪みなと中央病院工事で初弾のトライアルを行い、道を切り開いてきた。その後、大阪本店エリア内で取り組むワンモデルプロジェクトは7件にも達する。中でもサテライトモデルにも挑戦する新大阪第2NKビル新築工事はワンモデルBIMの進化形として社内の期待も大きい。
工事規模はS造地上13階建て塔屋1層延べ2万5736㎡。谷口所長はワンモデルBIMとサテライトモデルへの対応について、生産設計部門やiPDセンターと念入りに打ち合わせを行ってきた。「横断的なデータ連携が実現しなければ、ワンモデルBIMの効果を存分に発揮できない」と考え、専門工事会社の選定も前倒しして準備を整えてきた。

専門工事会社はクラウド上でワンモデルデータにアクセス
福元裕太設計長は「各工種ともワンモデルやサテライトモデルに理解のある専門工事会社に参加してもらうことができた」と考えている。専門工事会社は2次元を併用しながらBIM対応に苦労する社もあったが、クラウド上のベースデータから専門工事会社自らが部材データを出し入れするサテライトモデルの枠組みに挑む動きも見られた。谷口所長は「図面チェックもスムーズで現場取付時の作業手戻りもなく、ワンモデルの効果が遺憾なく発揮できた」と手応えを口にする。
現場が重要視してきたのはBIMデータを厳密に管理することだ。ワンモデルBIMは関係者の密接な情報共有が欠かせないため、同社はデータの円滑な運用をSBSルールとして定めている。しかも今回はサテライトモデルのトライアル現場であることから、データの更新はこれまで以上に頻繁に行われる。「ベースモデルはむやみにさわらないことを前提に進めなれば現場が混乱してしまう」と、福元設計長はBIMコーディネーターの役割も兼務し、データ管理についてもコントロールしてきた。
設計部門ではワンモデルBIMの初弾プロジェクトとなった大阪みなと中央病院を超えるワンモデルBIMを実現したいと、意匠、構造、設備の統合設計モデルを施工段階に引き継いだ。現場ではベースデータがしっかりと構築され、まさに集大成のワンモデル現場となった。春井徳之副所長は「現場にとってはワンモデルの中に蓄積されたデータをどう有効に使うかが問われる。実はここではMR(複合現実)を使った施工検証など、次代を見据えた新技術の実証実験も進めてきた」と明かす。

現場は12月に竣工を迎える
12月の竣工に向け工事は順調に進んでいる。谷口所長は「BIMといっても現場運営の仕方は何一つ変わっていない」と振り返る。「従来と大きく違うのは図面製作の部分であり、それによってもの決めがスムーズに進み、専門工事会社との関係性はより親密になった」。サテライトモデルは専門工事会社と密接につながり合うワンモデルBIMの進化形として動き出した。
【B・C・I 未来図】ほかの記事はこちらから
建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら