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5月10日 金曜日

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【BIM未来図-ゼネコンはいま-】大林組 (1) 進化するワンモデルBIM/専門工事との密接な連携へ

 大林組が設計施工の全現場にワンモデルBIMのデータ提供を始めた。プロジェクト関係者がクラウド上で1つのモデルから情報を出し入れするワンモデルBIMに乗り出したのは2017年。これまでに設計から施工まで一貫してワンモデルを活用する現場を着実に増やしてきた。iPDセンターの田岡登部長は「ワンモデルが社内のインフラデータとして機能し始め、新たなBIMのステージへと踏み込もうとしている」と強調する。ワンモデルBIMの“進化”を追った。

ワンモデルは社内のインフラデータとして機能


 大手ゼネコンの中でも先行してBIMに取り組んできた同社は、BIM標準ソフトとしてオートデスクの『Revit』を選定し、本支店に設計から生産まで全フェーズのBIMプロジェクト支援を担うBIMマネジメント課を整備するなど、着実にワンモデルBIMの導入体制を整えてきた。推進組織も10年にBIM推進室が発足して以降、14年にPDセンター、19年に現在のiPDセンターへと規模、機能ともに拡充している。

 設計から施工まで一貫して取り組んだワンモデルBIMのうち、大阪本店では初のトライアルプロジェクトとなった大阪みなと中央病院新築工事を出発点に、これまでに7件のプロジェクトで実績を積み、社内をけん引してきた。iPDセンターの飯田邦博担当部長は「大林組では専門工事会社と密接に連携する新たなワンモデルBIMの枠組みにも挑もうとしている」と、大阪で進行中のトライアル現場の存在を明かす。

 ワンモデルBIMは、常に正しい情報を伝達する手段として位置付けられてきた。オートデスクのクラウドシステム『BIM360』を全面導入する中で、クラウド上に置いた1つのモデルデータから情報を出し入れすれば、プロジェクト関係者は常に最新のデータにアクセスできる。データ流通の最適解としてワンモデルの枠組みが構築され、19年にはデータ構築の厳密なルールとしてSBS(スマートBIMスタンダード)を定め、社内のデータ連携環境も整えた。

新たに取り組む「サテライトモデル」

 「最終的に専門工事会社ともつながらなければ、ワンモデルBIMのメリットを最大限に生かすことはできない」。iPDセンターの森泰志課長はワンモデルBIMの進化形として新たに取り組み始めた『サテライトモデル』の狙いをそう表現する。専門工事会社はクラウド上でベースモデルにアクセスし、現場に提供する部材モデルとの調整に活用するだけでなく、そのデータを部材の製造工程にも流通できれば、現場から工場生産の一貫したBIMが実現する。

 施工段階では、ゼネコンが専門工事会社に部材モデルの提供を求めるケースが広がっているものの、要求モデルが製造工程に引き継ぐレベルと異なるため、専門工事会社はゼネコン向けのモデルとして仕上げる必要がある。しかも頻繁に発生する設計変更に伴うデータの修正に対応せざるを得ない。

 サテライトモデルは、プロジェクト関係者がクラウド上で最新の情報にアクセスできるワンモデルBIMの利点を最大限に生かす考え方として誕生した。専門工事会社からは自らの一貫BIMを後押してくれる枠組みとして賛同の声が上がり始めた。


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