【BIM未来図-ゼネコンはいま-】大林組 (4) 現場がモデルを維持管理/コーディネーターが連携の要 | 建設通信新聞Digital

5月10日 金曜日

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【BIM未来図-ゼネコンはいま-】大林組 (4) 現場がモデルを維持管理/コーディネーターが連携の要

 大林組が大阪市内で施工中の新大阪第2NKビル新築工事現場では、BIMコーディネーターを兼務する福元裕太設計長がデータ管理の最前線に立っている。サテライトモデルに挑む初のワンモデルBIM現場として、専門工事会社との密接なデータ連携が求められるため、同社はBIMコーディネーターを初めて本格的に運用した。

 福元氏は生産設計部門やiPDセンターと念入りに打ち合わせした上で、「ベースモデルはむやみに触らないことを前提に明確なルールを持って挑んだ」と強調する。BIM対応に前向きな専門工事会社を選び、サテライトモデルの考え方や進め方を共有し、現場が一丸となって取り組んできた。専門工事会社はオートデスクのクラウドシステム『BIM360』上でサテライトモデルにアクセスし、自ら担当する部材モデルを重ね合わせ、整合性確認などを進めてきた。

データ更新はコーディネーターが集約し、所長を介して生産設計部に伝達


 ベースモデルのデータ更新はコーディネーターが修正部分を集約し、所長を介して生産設計部に伝えられる。現場を統括する谷口慎二所長は「ベースモデルの維持管理を進めることは最前線であるわれわれ現場の役割であり、BIMコーディネーターがしっかりと機能すれば、ワンモデルBIM現場は円滑に動く」ことを実感している。現場では専門工事会社とのかかわり方がより密接になったことで「図面チェックもスムーズで現場取付時の作業手戻りもなく、ワンモデルの効果を遺憾なく発揮できた」と手応えを口にする。

 工事は2022年1月に完成を迎える。春井徳之副所長はサテライトモデルに取り組む中で、「ベースモデルの中にある情報をしっかりと使い切ることが生産性向上の新しいアイデア出しにつながる」と考えている。社内では21年度から設計施工の全現場にワンモデルBIMデータの提供をスタートし、今後は導入現場が一気に拡大していく。これからは「現場が主体的にワンモデルの使い方を考える流れが広がる」と期待をのぞかせる。

現場は明確なルールでデータ連携を進めている


 谷口所長は「ここでの成果を社内に広く水平展開し、ワンモデルBIMを次のステージを引き上げたい」と力を込める。ワンモデル現場の運用で重要なのは現場が円滑にベースモデルを活用することだが、一方で「データ管理の要であるBIMコーディネーターに負担が出ないような体制づくりを検討すべきであり、群管理の枠組みとして進めることも1つのやり方だろう」と感じている。

 サテライトモデルの初トライアル現場ではクラウド上のベースモデルを使って、実際に専門工事会社が部材モデルの調整を進めてきたが、福元氏は「専門工事会社が部材製造工程にデータをつなげるまでにはまだ至っていない」と明かす。専門工事会社が一貫BIMを実現するには、現場から部材製造に至る一連の生産改革に社を挙げて乗り出す必要がある。ゼネコン各社で施工段階へのBIM導入が一気に進む中、専門工事会社のBIM対応をいかに引き上げるべきか。サテライトモデルは専門工事会社と密接につながり合うワンモデルBIMの進化形として力強い一歩を踏み出したが、専門工事各社に幅広く浸透させるための道のりは平坦ではない。



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