【BIM未来図-ゼネコンはいま-】大林組 (2) サテライトモデルへの挑戦/専門工事会社のBIM追求 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【BIM未来図-ゼネコンはいま-】大林組 (2) サテライトモデルへの挑戦/専門工事会社のBIM追求

 大林組がワンモデルBIMの進化形として、サテライトモデルの考え方を打ち出したのは2年前のことだ。同社と同様に他の大手ゼネコンもBIMの導入を拡大しており、近年の現場では専門工事会社に対し、部材モデルの提供を求めるケースが目立ち始めている。しかしながら、ゼネコンごとに要求するモデルデータの中身は異なる。iPDセンターの森泰志課長は「専門工事会社が主体となり、緩やかにワンモデルBIMと連携できる枠組みとしてサテライトモデルに行き着いた」と明かす。

サテライトモデル構成


 同社がクラウド上に置くワンモデルは、対象プロジェクトのベースモデルであり、同社が工事を進めていく上で常に最新の状態で更新されている。2019年にデータ構築の社内ルールとしてSBS(スマートBIMスタンダード)を定めたのも、社内の各部門が統一ルールに沿ってBIMと向き合うことが、常に正しい情報としてのベースデータを維持する前提になるからだ。

 専門工事会社にとっては、クラウド上のベースモデルに自らが作成した部材モデルを重ねることで整合性を確認できるだけでなく、そのデータをそのまま製造工程に連携させられれば、一貫BIMの筋道も整う。森氏は「専門工事会社にも密接につながるBIMがサテライトモデルの考え方」と力を込める。

 そもそも専門工事会社の多くは、製造工程への活用を前提にモデル詳細度(LOD)400でモデルデータを作成している。ゼネコンは工事を進める上でそこまで高密度なモデルを必要としていないため、あえてLODを引き下げて現場に提供しているのが実情だ。ゼネコンにとっては使いやすい部材モデルでも、専門工事会社にとっては製造工程まで一貫して使いにくい状況を生んでいる。

サテライトモデル実例

 サテライトモデルではベースモデルに部材モデルを重ね合わせ確認する枠組みとなるため、専門工事会社側のLOD400にも順応できる。そもそも大林組では工事を円滑に進める観点からLOD330でベースモデルを位置付けているが、クラウド上で専門工事会社が自らのLOD400モデルを重ねて整合性の確認ができるため、そのまま製造工程へのデータ活用も可能になる。

 この考え方に賛同し、前向きに対応する専門工事会社は着実に増えつつあり、現在は30社程度まで拡大しているという。社を挙げて製造工程につなぐ一貫BIMに乗り出す専門工事会社も少なくない。パーティション専業メーカーのコマニー(石川県小松市)もその1つだ。大林組と同様に標準BIMソフトにオートデスクの『Revit』を位置付けるとともにBIM推進課を置き、本格的に製造までの一貫BIMにかじを切った。工場生産への部材拾い出し作業はプロジェクト番号を入力するだけの効率化が実現し、大幅な生産効率化とともに品質向上も実現している。

 これまで専門工事会社は、ゼネコンのためにBIMデータを提供していた。サテライトモデルに賛同する専門工事会社からは「自分たちのためのBIMに取り組めるようになった」との声が出ている。



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