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4月28日 日曜日

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【BIM未来図-ゼネコンはいま-】大林組 (3) クラウド上で緩やかな連携/意匠、構造、設備のモデル統合

 大林組では、サテライトモデルのトライアル現場が進行中だ。大阪市内で施工中の新大阪第2NKビル新築工事はS造地上13階建て塔屋1層延べ2万5736㎡。大阪本店生産企画部の江藤達朗担当部長は「着工のタイミングや工事の規模感などを考慮し、初弾プロジェクトとして選定した」と明かす。管轄する大阪本店では初のワンモデルBIM現場だった2019年竣工の大阪みなと中央病院工事で成果を収めていたこともあり、「さらに一歩先をいくワンモデルBIMを実現したい」との思いが各部門で広がった。

来年1月に竣工を迎える新大阪第2NKビル新築工事  

 設計チームもその1つだ。ワンモデルBIMプロジェクトとして設計を進める中で、サテライトモデルのトライアルに選ばれたことで「各担当のギアが変わった」と意匠設計を担当した大阪建築設計第一部の中谷真副課長は振り返る。BIM普及の先導役であった構造設計部の藁科誠副課長をチームに加え、体制も整えた。ワンモデルBIMのデータ構築ルールであるSBS(スマートBIMスタンダード)に準拠しなければ、ワンモデルの効果を現場で生かすことはできない。藁科氏は「大阪みなと中央病院では実現できなかった意匠、構造、設備の統合モデルを実現できた」と力を込める。

 社内では構造部門が完全BIM化を達成し、後を追うように意匠部門も導入率を引き上げている。構造設計部の大畑雄俊主任は「設計当初は作業が錯綜(さくそう)した分、不整合や手戻りはなく、結果的に円滑な作業が実現できた」と手応えを口にする。設備部門はBIM導入が遅れていたが、今回初めて現場に設備モデルを提供したことを機に「われわれ設備部門でにもBIMの流れが一気に強まるだろう」と設備設計部の酒井孝一郎副課長は考えている。

社内関係者はウェブでつながり情報共有を進めてきた

 設計チームが心掛けてきたのは、SBSに準拠したベースモデルの構築だけではない。むしろクラウド上に置くベースモデルを更新する際、どう円滑にコントロールしていくかというデータ管理の部分に注力してきた。設計変更は頻繁にあり、誰がデータを修正、更新するかを厳格に管理しなければモデルが勝手に一人歩きしてしまう。中谷氏は「意匠設計担当がコントロール役となり、修正点を生産設計部門に伝えて更新する流れを徹底しきてきた」と説明する。

 設計から生産まで全フェーズのBIMプロジェクト支援を担うBIMマネジメント課は全国の本支店に配置され、現在は89人体制にまで拡大した。同社ではモデリング着手前にBIMキックオフ会議を開いているが、サテライトモデルのトライアル現場となる新大阪第2NKビル新築工事が動き出せば、モデル管理はこれまで以上に錯綜する。大阪本店内のワンモデルBIMプロジェクトを担当する藤井彩乃主任は「サテライトモデルについても関係者間で念入りに意思統一を図ってきた」と説明する。

 社内では各部門の関係者十数人がウェブ会議システムでつながり、情報共有やデータ更新の権限も厳密にルールを定めるとともに、サテライトモデル内ではパラメーター連携など厳格なルールを必用としない「緩やかな連携」をクラウド上で行うという約束事も決めた。現場ではサテライトモデルを円滑に進める役割として「BIMコーディネーター」を任命したことも新たな試みの1つだ。



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