【BIM未来図-ゼネコンはいま-】大林組 (5) 専門工事会社につながるBIM/常に正しい情報を保持する | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【BIM未来図-ゼネコンはいま-】大林組 (5) 専門工事会社につながるBIM/常に正しい情報を保持する

 大林組がワンモデルBIMの進化形として取り組むサテライトモデルの初トライアル現場である新大阪第2NKビル新築工事を統括する谷口慎二所長は、専門工事会社に対して「将来を見据えてBIM対応を突き詰めるべき」と助言してきた。BIM標準システムにオートデスクの『Revit』を位置付け、設計施工の全現場にワンモデルデータの提供を始めた同社のように、他のゼネコンもBIM導入へと一斉にかじを切っている。専門工事会社にとってはBIM対応力が求められる時代が現実味を帯びつつあるからだ。

ベースモデルは最新の状態に保たれている 


 そもそも同社がサテライトモデルを打ち出したのも、専門工事会社に対して主体的にBIMのメリットを感じてもらいたいとの思いが根底にある。iPDセンターの森泰志課長は「専門工事会社には現場から製造までの一貫したBIMと真正面から向き合ってもらいたい」と説明する。クラウド上に置くベースモデルは専門工事会社が自らの規格で作成した部材モデルを重ね合わせ、整合性を確認する枠組みだけに「工場生産に使う製作図レベルの詳細なモデルのままでも確認ができる」と強調する。

 同工事の意匠設計を担当した大阪建築設計第一部の中谷真副課長も「専門工事会社にとってはBIMへの初期投資は負担になるが、現場から部材作成までの一貫した枠組みが整えば、大きなコスト競争力を発揮できる」と続ける。現在の専門工事会社はゼネコンが求める水準のモデルを提供しているため、自らが部材製造に使っているデータを修正して対応せざるを得ない。森氏は「サテライトモデルを少しでも多くの専門工事会社に試みてもらい、一般化に近づけていきたい」と先を見据えている。

 現在、同社のサテライトモデルに賛同する専門工事会社は30社程度に達し、現場から部材作成まで一貫した生産改革に乗り出す動きも出てきた。iPDセンターの飯田邦博担当部長は「BIM対応というとらえ方ではなく、クラウド上で情報を連携させるという視点で取り組んでもらえれば踏み出しやすい。正しい情報を共有することが重要であり、それはモデルでなくても良い」と呼び掛ける。

MR(複合現実)活用など新技術の活用も進む 


 同社が社を挙げて取り組むワンモデルBIMには、プロジェクト関係者がクラウド上のベースモデルから情報を出し入れする考え方が前提にある。それぞれがデータを有効活用することで、関係者すべてがBIMのメリットを享受できる。だからこそ同社はSBS(スマートBIMスタンダード)に準拠したデータ構築を徹底している。ベースモデルが常に正しい最新の状態に保たれていれば、それに連携する社内外の関係者は円滑に順応できるからだ。

 iPDセンターの田岡登部長は「正しい情報を保持することで、社内では現場が主体的になり、新たな技術や生産性向上の取り組みが生まれている。まさにワンモデルは大林組のものづくりを支えるインフラデータとして機能し始めている。専門工事会社もベースモデルを大いに活用してもらいたい」と訴える。大林組のワンモデルBIMは専門工事会社ともつながるBIMとして進化を遂げようとしている。サテライトモデルには専門工事会社主体でBIMを追求してほしいという同社のメッセージが込められている。(おわり・西原一仁)


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