【経営軸線・郷土建設藤村組】ICT活用工事の全工程を内製化、生産性が向上 | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【経営軸線・郷土建設藤村組】ICT活用工事の全工程を内製化、生産性が向上



 郷土建設藤村組(新潟県上越市、藤村英明社長)は、ICT活用工事の全工程を内製化し、生産性向上や休日確保につなげている。i-Constructionが提唱される以前からいち早く動き始め、ハードとソフトの充実や人材育成に力を注いだ。これからは、BIM/CIMやDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応に本腰を入れる。藤村社長は「いままでの仕事のやり方で良い部分は残しながら、ICTを上手く活用していきたい」と意気込む。 同社のICT内製化の歩みは、2014年から始まる。新たに登場した自動追尾型トータルステーションを購入し、ワンマン測量を実現するため、3次元設計データの作成を始めたことがきっかけだった。

藤村英明社長


 17年には直轄の河道掘削工事で初めてICT活用工事に挑戦。3次元起工測量と出来形管理の測定以外は自社で実施したが、外注の費用がかかることや、会社に技術が残らないことに危機感を覚えた。加えて、外注による「待ち」が発生することや、外注企業が容易に起工測量している様子を目の当たりにしたことも、内製化の取り組みを加速する要因となった。藤村社長は「元来、当社は外注に頼らず自社だけで工事を完結させるポリシーがあった」と語る。

◆4年計画で取り組み推進/今後はBIM/CIMに注力
 18年にはICT内製化に向けた4カ年計画を策定。最終年にはどの現場、技術者でもICTを使いこなすことを目標に掲げた。同年には早速2件目のICT活用工事に取り組み、初めて全行程を自社のみで実施した。また、ドローンや地上型レーザースキャナー、ICT建機、GNSS(衛星測位システム)受信機などハードを一気に整備した。そうした機器やソフトを社員が過不足なく扱えるよう、除雪以外の仕事が少なくなる冬期を利用して社内で勉強会を開き、習熟度を高めた。

冬期には社内でICTに関する講習会を実施


 計画期間中には3次元設計データの作成が定着したことから、ほ場や堰堤の床掘などさまざまな工種でICTの活用に取り組んだ。ダンプや重機の動態管理を見える化するアプリケーション、クラウド対応のウェブカメラ、測量に必要な機器を搭載するICT専用車なども導入し、業務効率化への歩みを着々と進めた。

 その結果、従来と比べて工期は3-4割、作業人員は2-3割の削減につながった。生産性向上に伴い、20年度からは4週8休の週休2日制も導入した。藤村社長は「担い手がいなくなっている現状を補うためにはICTが必要だ。さらに進めていく」と力を込める。

 ICTの導入は、社員の技能やモチベーションの向上に寄与している。藤村社長は「オペレーターも初めはICT建機に抵抗があったが、実際に乗ると良さを実感してくれた」と振り返り、「目視だけではなくデータで品質を確認でき、さらなる技能の向上にもつながっている」と話す。

ICT専用車。測量機器などの設備を搭載


 ICTの業務は女性も活躍できる分野と捉え、19年には工事部ICT担当として池亀舞子さんを採用した。池亀さんはこれまで建設業とほぼ無縁だったが、いまでは現場でのドローンの操縦や点群データの作成などを手掛ける。加えて、ユーチューブ向けの動画編集やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での発信なども担当し、同社に欠かせない存在となっている。池亀さんは「現場も含めていろいろな仕事ができて充実感がある」とやりがいを語る。

 同社はさらなる潮流の変化を見据え、24年までの新たな4カ年計画を策定した。23年度に控える直轄土木工事でのBIM/CIMの原則化やDXの加速を踏まえ、その取り組みに力を入れる。BIM/CIMは、既に一部工事で試行的に取り組んでいるが、将来的には専用スタッフの配置を目指す。

 DXに関しては、小柳建設が開発した「ホロストラクション」を導入したほか、コマツらが設立したアースブレインによる次世代スマートコンストラクションの動向に視線を送る。

 22年4月からはスマートオフィスとして生まれ変わった社屋の運用も始まる。現場の動きが本社からも把握できる機能やテレビ会議スペース、災害時も機能する電源などを備えた。藤村社長は「ICTはどんどん便利になり1-2年で大きく変わるため、遅れを取らずにいきたい。ただ新しいものだけを取り入れるのではなく、勉強して分別しながら採用していきたい」と先を見据える。






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