【i-Con2022⑥】JR東日本 「作業終了確認車」の開発進む/画像認識、点群データで支障物感知 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【i-Con2022⑥】JR東日本 「作業終了確認車」の開発進む/画像認識、点群データで支障物感知

【鉄道工事のi-Construction/ICTが業務プロセスの変革を推進】
 建設工事におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)は、鉄道運行の安全性確保、現場作業の生産性向上に向けた鉄道工事の分野でも積極的に推進されている。限られた時間で最大限の効率化が求められる線路閉鎖後の夜間工事などで効率的に作業を進めるため、BIMや点群データによる3次元モデルの活用、画像認識やAIなどの先端的な技術を積極的に採用し、従来の工事プロセスの変革を視野に入れた取り組みを進めることで、安全確保、省人化、時間短縮などに効果を発揮している。積極的にICTの活用を進めているJR東日本とJR九州の最新の取り組みを紹介する。

 JR東日本東京工事事務所は、線路閉鎖作業終了前に行う跡確認・建築限界確認の安全性や生産性を向上させるため、見落とし防止や確認時間の短縮を目的とした「作業終了確認車」の開発を進めている。

 作業終了確認車は、遠隔操作で自走可能であるとともに、画像認識技術などの最新技術を搭載しており、目視確認で発生しがちなヒューマンエラーの防止、省人化や確認時間短縮の効果を見込んでいる。

 2022年度からは現場における試行運用を予定し、その効果や新たな課題を抽出し、課題解決した上で本格運用につなげる考えだ。

遠隔操作で自走可能な「作業終了確認車」(JR東日本撮影協力)



◆ヒューマンエラー 機械的支援で撲滅

 鉄道工事では、線路閉鎖作業終了前に跡確認・建築限界確認が必須の作業となる。現状は跡確認者と建築限界確認者がそれぞれ目視による確認を実施しているのだが、 作業の精度は確認者の注意力に依存すること、施工区間が長い現場においては確認に多くの時間を要することが課題となっており、改善が望まれていた。

 今回の開発は、東京工事事務所が「現場第一線における技術開発」の社内制度を活用して実施したもので、確認作業を機械化することで、終電から初電までの限られた時間での施工が求められる駅改良工事などの安全性と生産性向上を図る。JR東日本とJR東日本コンサルタンツの2社が共同して開発を進めている。

 具体的には、台車に建築限界内の支障物を検知可能な3次元センシング検知機能と色相による画像検知機能(色検知)を搭載した。これにより、跡確認・建築限界確認における置き忘れや限界内支障の見落としなどのヒューマンエラーを防止する。

 台車については、跡確認者が歩くスピードより早い速度で線路上を走行する事が可能で、遠隔操作による前進後進、スピード調整、逸走防止機能も備えている。

色検知による画像認識(JR東日本撮影協力)


◆部署間の垣根越え技術開発を推進

 本開発においては、水戸支社土浦保線技術センターの「跡確認記録装置の開発」の取り組みと連携し、部署間の垣根を越えて取り組んでいるのも特徴だ。昨年度までに、東京工事事務所が開発した自走トロ台車と検知システムの知見をベースに土浦保線技術センターが開発していた色検知による画像認識技術、点群を用いた3次元センシング検知機能を付加しつつ、東京工事事務所が改良・開発・実証実験を進めている。

 色検知機能は、検知するための色相を事前に設定し、現場に持ち込む工具などに同色のテープを巻くことで、線路上に置き忘れがおきた場合にカメラを通じて検知できるものである。

 建築限界内支障物検知機能は、センシングカメラを用いて建築限界周辺の点群データを取得し、建築限界内における支障物の有無を検出するものだ。

点群を活用した3次元センシング検知(JR東日本撮影協力)


 色検知機能、建築限界支障物検知機能ともに支障物を検知した際には、モニター画面で表示するとともにアラートを発報する仕組みになっている。


◆実現場での試行導入22年度からスタート

 22年度より、実際の現場に作業終了確認車を試行導入し、跡確認者と建築限界確認者が行う目視確認を機械的に支援することで、ヒューマンエラー防止につなげ、さらなる安全性向上を図る。

 また、試行導入した中で効果や課題を検証し、各機能のブラッシュアップを図る。

 将来的に、跡確認・建築限界確認を作業終了確認車に一元化していくことを目指している。

 東京工事事務所山手課の柏原悠さんは「現在2人で行っている確認作業を作業終了確認車が代行し、ホーム上などからコントローラーで自動運転することで省人化と生産性向上を図るとともに、他の工事事務所や保守部門とも作業終了確認車を共有することで、それぞれの部署で必要とするニーズを捉えつつ、さらに良いものにできるようにしていきたい」と将来を見据えている。



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