【BIM普及へ本質理解促す】BIM教育機構新理事長 佐野 吉彦氏 | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

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【BIM普及へ本質理解促す】BIM教育機構新理事長 佐野 吉彦氏

(さの・よしひこ)1979年東京理科大工学部一部建築学科卒、81年東京理科大大学院工学研究科建築学専攻修了。竹中工務店勤務を経て、86年安井建築設計事務所入社。97年から社長。日本建築士事務所協会連合会会長、大阪府建築士事務所協会会長、日本建築家協会副会長・国際委員長、日本建築協会会長などを歴任。アメリカ建築家協会名誉フェロー会員でもある。神奈川県生まれ、67歳。

 BIM技術者の教育、育成を通じて、BIMのさらなる普及とこれを活用したプロジェクトの質的向上を支援するBIM教育機構が1月20日のキックオフミーティングを経て本格始動した。理事長に就いた佐野吉彦氏(安井建築設計事務所社長)は「本質理解に向けた基礎教育」の重要性とともに、建築生産に携わる多様なプレーヤーが「同じ概念、共通認識を持つ」ことが大事だと強調する。今後の取り組み方針などを聞いた。

--設立の狙いは
 「2018年ごろから活動してきたBIM教育研究会を前身に、一般社団法人として21年10月12日に設立した。BIM技術者の教育・啓発、人材育成とBIMの普及活動に取り組むことでBIMによるプロジェクトの質的向上、発展に寄与することを目的としている。活用の裾野を広げ、それを横通ししていくことを考えると基礎教育は非常に大事だ。そのためのテキストとして研究会でつくった『BIM BASIC I 建築・BIMの教科書』を1つの礎に、BIMに関する出版と研修、BIM基礎知識診断の3本立てで事業を進めていく。ベーシックな知識の習得を支援することは、建築設計3会など各団体でのBIMをどう使っていくかという議論と補完し合うことができる。同じ概念でBIMを使えるようにしていくことも1つの目標と考えている」

--具体的な活動について
 「BIMを学ぶ初級編の『BIM BASIC I』を補完し、最近のBIMの動向などの知識をさらに深め、業務の遂行に資する『BIM BASIC II』の編集を現在進めており、7月の発行を予定している。これらをテキストとしたオンライン研修の在り方もキックオフミーティングで議論した。まだアイデアの段階だが、メタバースのように画面の中に入り込んで研修することも可能かもしれない。新しい時代にあった教育の方法を考え、22年度内には研修を開始したい」
 「オンラインによるBIM基礎知識診断テストの受診申し込みも1月20日から開始した。数日で10件を超える申し込みがあったほか、問い合わせも多い。知識をどこまで身に付けたか、現状の理解度を確認するもので、特に地方でBIMを学び、業務に生かそうとする人にとって有用なツールになると考えている」

--資格制度の創設に向けては
 「建築生産プロセスのどの分野でもBIMをきちんと扱え、それによって公共工事に関する調査や設計などの品質確保に資する技術者資格は必要であり、国土交通省での検討状況も踏まえながら議論を深めていきたい。結果的には教育をどうするかという問題でもある。議論の足掛かりとして機構が問題提起し動きを活発化させたい」

--他団体との今後の連携は
 「団体の立ち位置、また組織やプロジェクトの大小にかかわらず、BIMの持つ本質を理解し共通の認識を持つことは非常に重要であり、どの団体の活動とも補完し合うものだと考えている。国交省の建築BIM推進会議に参加している団体などにもプロモーションし、連携を呼び掛けたい」



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