【BIM未来図・教育現場から(中)】最先端の設備で「創造する喜び」を/チーム組みコミュニケーション能力育む | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

B・C・I 未来図

【BIM未来図・教育現場から(中)】最先端の設備で「創造する喜び」を/チーム組みコミュニケーション能力育む

 麻生建築&デザイン専門学校(福岡市)にある7つの教育コースの中で、BIM教育の主な舞台となっているのが2年制の「建築CAD科」だ。

 教育カリキュラムは大きく1年間の前半(前期)を基本的な操作やオペレーション指導にあて、後半(後期)は課題制作による実技教育を中心に展開している。最新のBIM/CIMソフトをインストールしたノートPCを学生全員が所有しているのはもちろん、高スペックのPCやソフトが利用可能な「BIM室」や、BIMソフト『Archicad』のチームワーク機能が利用可能な『BIMcloud Basic』を校内に設置。学内どこでも接続できるWi-Fiも備え、ハード面の環境は万全だ。

 また通常の授業とは別に、「BIMゼミ」と呼ばれる自主教育の場を定期的に開催しているのも特徴だ。マロニエ学生BIM設計コンペティション(栃木県建築士事務所協会・日本建築士事務所協会連合会共催)を始めとする設計コンペで、優秀な成績を残した学生の多くがこのBIMゼミ出身者だという。BIM教育で統括的な役割を果たしている福光春子教務部建築系リーダーは「学科・学年を超えてチームを組むことで、操作技術を継承することに加え、社会関係を学ぶ場にもなっている」と説明する。

福光氏


 同校におけるBIM教育推進の立役者の1人が、講師の道脇力氏だ。建築設計事務所、ゼネコン設計部を経て2005年に独立し、「道脇設計室」を設立。設計活動のかたわら15年から同校のBIM教育に携わってきた。

道脇氏


 道脇氏とArchicadとの出会いは10年にまで遡る。「もともと3次元モデリングが好きで興味があった。でもそのころはまだ教材もコミュニティーもなく、独学で学ぶしかなかった」と当時を振り返る。それから10年が経過したいまは「ユーザー数が爆発的に増え、コミュニティーが全国にできてユーザー同士が情報交換できる環境が整備された。BIMという言葉もすっかり市民権を得たように感じる」と隔世の感があると話す。

 道脇氏は学生たちとふれ合いながら「まずはArchicadを楽しんでもらい、このツールを使って頭の中に思い描いたものをアウトプットする面白さを感じてほしい。そこから創造する喜びというものを伝えることができれば」と教育者としての思いを語る。また、課題制作は原則1人ではやらせずに、複数人のチームで取り組むことを徹底させている。「チームを結成することでお互いが教え合い、チーム全体で実力が養われる。建築は決して1人で創ることができないということ、そして建築において何より求められるのはコミュニケーション能力だということを理解してほしい」(道脇氏)からだ。

 「若者たちの吸収する能力にはいつも驚かされる。ツールの進歩によって、新たな可能性が広がり始めたのは間違いない」と学生たちの成長に道脇氏は目を細める。その一方で危惧も抱いている。その理由について「建築生産プロセスの分業化が進む中で、いまのBIMとは厳密に言うならばBM(ビルディング・モデリング)。真ん中にあるはずのI(インフォメーション)の部分が抜け落ちている」と表現する。

 「情報を整理し、操作することができて初めて真のBIMが成立する。意匠設計だけでなく構造設計や設備設計も含めた、あらゆる情報を統合した本質的な設計にいずれ挑戦させたい」と前を向く。福光氏も「限られた学生期間の中で、できることはある程度限られてしまうところもある。都市計画を学ぶ建築工学科やリフォーム・リノベーションなどを専門的に学ぶ建築学科への学習指導にも広げていけたら」とBIM教育の裾野の拡大を考えている。

学科・学年の異なるチームで課題に取り組むことが、全員のBIMスキルの向上につながる
(写真提供:グラフィソフトジャパン)

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