【BIM未来図・教育現場から(上)】CAD通じ若者の可能性引き出す 麻生建築&デザイン専門学校 | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【BIM未来図・教育現場から(上)】CAD通じ若者の可能性引き出す 麻生建築&デザイン専門学校

 麻生建築&デザイン専門学校(福岡市)が、精力的にBIM教育を取り入れている。文部科学省の職業実践専門課程にも認定されている同校は、九州唯一のCAD専門学科を擁し、2014年からBIM教育を本格実施するなど、BIMの可能性に早くから取り組んできた。BIM教育で若者の可能性を広げる同校の取り組みを追った。

 同校は麻生塾が経営する福岡県内13校の専門学校の1つで1998年「麻生工科専門学校」として設立された。「建築工学科」「建築学科」「建築CAD科」など7つの学科に20年12月現在約800人が在籍している。2年ないし3年にわたり建築のプロとしての実践的な学びを得た学生たちは、地元九州を中心にゼネコンやハウスメーカー、設計事務所などに就職している。

 教育方針について校長代行の今泉清太氏は「実学主体の専門学校ゆえ、あくまでも学生の自主性を重んじつつ、学生一人ひとりに寄り添った教育を目指している」と話す。「もともとCAD教育専門校としてスタートしたこともあり、CAD教育については早くから定評がある」と胸を張る。「売り手市場」を背景に大手ゼネコンの内定者も増えるなど、学生の就職状況は非常に好調だ。

今泉校長代行


 同校がBIM教育に取り組み始めたのは13年のこと。地元のとある建築家からBIMの必要性を説かれたのがきっかけだった。「これから必須のツールになるということは理解したが、海の物とも山の物ともつかないという思いもあった。でも誰もやらないからこそうちがやろうと決意した」と今泉氏。当時講師で、現在は教務部建築系リーダーを務める福光春子氏も「ゼロからのスタートだった」と振り返る。

 学生の使いやすさなども考慮して最終的にBIMソフト『Archicad』を教育ツールとして決めた。採用を決めたのは「スペックはもちろん、学校版が無償でライセンス提供されているArchicadがとても魅力的だった」(福光氏)。14年からBIM教育を本格化させた。

 その効果はすぐに現れた。現在は栃木県建築士事務所協会と日本建築士事務所協会連合会が共催している「マロニエBIM設計コンペティション」の15年度大会(第2回)で同校生2人がファイナルに進出し、続く第3回も3人がファイナルに進出した。17年度の第4回では同校生が最優秀と優秀賞を独占。並み居る有名大学の参加者を専門学校生が押しのけたことで話題にもなった。

 開催されなかった18年度の後も19年度は審査委員長賞と審査員賞に、そしてチーム形式となった20年度は1チームが優秀賞を獲得するなど、いまや麻生建築&デザイン専門学校は同コンペの入選常連校となり、全国にその名を知られるようになった。

 BIM教育が進展するにつれ、学生の就職状況にも変化が生じている。今泉氏は「以前と比べて設計事務所への就職が増えたと感じる」、福光氏も「インターンシップやオープンデスクで関東や関西の著名な設計事務所の門を叩く学生が増えた。学生たちが自信を持ち始めた現れかもしれない」とそれぞれ手応えを口にする。

 同校に対する評価と期待が高まる中で、今後の展開について「実施設計まで対応可能な実践力のある学生の育成を目指したい」と福光氏は意欲を見せる。今泉氏は「学生たちは必ずしも受験戦争をくぐり抜けてきた若者ばかりではない。それでも中にはきらりと光るセンスや才能を備えた者もいる。学生たちの資質をできる限り引き上げ、伸ばしてあげることが私たちの使命。BIMというツールを介して楽しみながら建築の世界をのぞいてもらい、自信を持って次のステージに進んでもらえたら」と微笑む。

CAD教育には早くから定評があり、学生1人ひとりに寄り添った教育を実践している
写真提供:麻生建築&デザイン専門学校

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