◆“アイコンネイティブ”が活躍
岩間氏は現在25歳。建設業でキャリアをスタートした時には既にi-Constructionが始まっていた。デジタルネイティブにあやかれば、「i-Con native(アイコンネイティブ)」の世代とも言える。
今ではiPhoneやiPadなどを使った3次元計測の使い手として注目される存在だが、会社でドローン測量による3次元計測などを担当する部署に就いたのは2020年4月からだった。
計測技術が徐々に板に付いてきた同年秋ごろにLiDAR機能を搭載したiPhone、 iPadに出会い、「未来が詰まっている」と直感した。建設現場では複数の高額な機器を活用した3次元計測が当たり前になっていたため、精度の違いはあれど「1台で同様に計測ができることに感動した。土木にも活用できるのではないか」と考えた。
以来、虜(とりこ)になった。「発売されたばかりで、うまく計測する方法を誰も知らない状態だったと思う」と当時を振り返る。「1000回ぐらい失敗した」こともあり、短期間で猛烈に検証作業を繰り返し、自身の技術レベルを高めた。
当初は特に意図せずSNSなどに投稿を始めたが、「新しい技術のため、情報をオープンにし、フィードバックをもらう方が自分のためになる」と考え、積極的な情報発信に努めた。「どんどんチャレンジしろという社風」も背中を押した。
比較表の公表は思わぬ方面からの反響を呼ぶ。「建設業だけでなく、建設系に興味のあるデジタル系の企業や3次元のCGクリエイターが興味を示した。建設業の割合は3割程度で自分の職種と関係のないデジタル関係の分野が多かった」と言う。ドメスティックだと感じていた建設業に対して新興のIT企業が多大な関心を寄せていることを肌感覚で知った。
さらに海外のアプリ開発会社からも日本の市場性などについて相談が持ちかけられるようになった。公表した比較表は大学の考古学授業などでも活用されたほか、取り組みがきっかけとなり地方公共団体主催のデジタルツインのイベントにも招かれるなど活躍の場は広がっている。
「自分はタイミングが良かっただけ。同じような取り組みをしている人は多くいる」と謙遜するが、比較表の完成度を高めることができたのは、SNSなどを介して知り合った多くの仲間のおかげだと感謝している。
「自分のフィールドはあくまで建設業」と言い切る。建設業に足を踏み入れた1年目、「寝ずに災害の復旧作業に当たった」。この経験もあり、「土木は社会的に必要で、やりがいがある」と感じるとともに、地域を守る存在であることを心に刻んだ。
今後は「デジタル分野から土木の業務を支援する人が増えるはず」と見据えるが、「現状の働き方は古く、そうした人材からは魅力的に映らないだろう」と感じている。従来手法との対立ではなく、「やりがいを守り、さらに生み出すためにはデジタル技術が不可欠」との観点から解決策を模索している。
「とにかく楽しい」と話すiPhone やiPadなどを使った3次元計測で、さらなる技術の高みを目指す。今後も自身のネットワークを広げ、同じ志を持つ仲間とともに、地域建設業から新たなムーブメントを巻き起こす。
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