【連載・それぞれの2025 生産性向上へ(上)】yasstyle松尾泰晴代表に聞く | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【連載・それぞれの2025 生産性向上へ(上)】yasstyle松尾泰晴代表に聞く

 「人生をかけて建設業を面白くしたい」。建設分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルタントを手掛けるyasstyle(愛知県豊川市)代表で国土交通省のICTアドバイザーなどを務める松尾泰晴氏はこう語る。デジタル化に積極的ではない多くの地域建設企業を「口を開けて待っているだけ」と厳しく指摘、そうした会社は「廃れてしまう」と警鐘を鳴らす。「親と刺し違える覚悟でデジタル化に取り組んだ」と話す自身の半生とともに今後ますます“個”が重要になるというDX時代の生き方について聞いた。

◆人生かけて建設業を面白く
 現在48歳の松尾代表は、愛知県の地域建設企業の三男として、高校卒業後の10代からキャリアをスタートした。実家の建設会社で約17年間、30代半ばまで主に現場監督として仕事に取り組んできた。
 転機となったのはパソコン用の3次元モデリングソフトのSketchUp(スケッチアップ)が市場に出回り始めデジタル化の流れが建設業にも押し寄せていた2000年ごろだ。

 「ど素人だった」と当時を振り返りつつ、ネット検索などを駆使し、見よう見まねで会社にデジタル技術を導入すべく、社内イントラネットの構築などに取り組んだ。「今後は建設業でも間違いなくデジタル化が進む」と確信していたものの、家族からは「そんな時代は来ない」と一蹴されたという。
 自身と会社の進む方向にずれを感じていた時、「専属の下請企業だった山口土木(愛知県岡崎市)から声を掛けてもらった」ことがきっかけとなり、転職を決めた。
 だが、地域ではたちまちうわさになり、家族との関係は悪化した。「絶縁状を書き、それ以来家族とは会うつもりはなかった」と覚悟を決めた。選択が間違いでないことを証明するため、親の会社を見返す決意で以来、デジタル技術に没頭した。

 技能者が中心の山口土木では、まずは米アップル社製のスマートフォン「iPhone」を導入した。いまから約10年程前で「当時の地域建設企業での導入は珍しかった」と話す。極力お金をかけずにデジタルツールを駆使し、アナログ的だった人員の管理手法を徹底的に見直した。その結果、2年で売り上げが倍増した。「手戻りが最大の無駄。デジタルツールを使って日程を詰めたら莫大な金になった」

◆DXで楽して稼ぐ
 「楽して金を稼ぐことが動機」と話し、ICT施工にも果敢に挑戦した。「狂ったように勉強した」というドローンは、国交省が16年にi-Constructionを打ち出す1年前から本格的に取り組んでいた。「3次元データのソフト解析を誰も教えてくれなかった。同じデータを使って何百回も練習した。その時の経験がいまに生きている」と振り返る。

 「i-Conがスタートした時、自分が担当した現場は既に導入が完了していた。起工測量から設計データ作成、施工、出来形管理を3次元データを使って実施し、データ上で利益率なども算出した。工期が本当に3分の2になった」と確かな手応えを感じた瞬間だった。



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