【記者座談会】港湾分野の諸経費検証モデル工事/女性管理職比率・男性育休取得率 | 建設通信新聞Digital

5月16日 木曜日

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【記者座談会】港湾分野の諸経費検証モデル工事/女性管理職比率・男性育休取得率

A 国土交通省が2022年度に旧運輸省系の港湾分野で「諸経費検証モデル工事(仮称)」を試行する。元請企業と下請企業が条件を満たした場合、対象工事の現場管理費率を約2.5%割増補正する。その条件は。

B 元請企業と下請企業が「港湾工事パートナーシップ強化宣言」を提出することを必須とする。元請企業と1次下請企業が標準見積書に基づいて請負契約を結び、2次下請以降にも標準見積書の作成を推奨した上で、割増分の下請企業への適正分配に取り組むことを表明する内容だ。

C 工事ごとに設置する三者連絡会で、元請企業と下請企業が交わした見積書などを確認するとともに、下請企業に契約の実施状況をヒアリングすることで、割増しによる下請企業への波及効果を検証する。旧建設省系でも実施していない先駆的取り組みだね。
A 試行を決めた背景は。

B 港湾工事に不可欠な作業船の数が、この20年ほどで半数近くまで減った。建設業就業者数も減少している。国交省は、作業船と人材を有する下請企業の利益水準が低いことが要因とし、作業船の更新や人材確保に投資できない状況が続けば、円滑な港湾工事の実施や迅速な災害対応に支障を来す恐れがあると指摘する。

C 親事業者と下請事業者の共存共栄に向けた取り組みを親事業者が表明する「パートナーシップ構築宣言」の考え方を取り入れることで、元請企業が主導して取引事業者全体の付加価値向上や適正な転嫁を進める環境整備を促し、港湾建設産業の持続可能性を確保することを狙いとする。

B 国交省はモデル工事の試行と並行し、港湾工事の事業環境を踏まえた請負代金の在り方検討を進める考えだ。

諸経費検証モデル工事は割増の波及効果を確認する国交省でも先駆的な取り組みになる

女性の持続的活躍へ実態に沿った取組を

A ところで、当社が大手・準大手ゼネコン、建築設計事務所、建設コンサルタント、道路舗装会社、設備工事会社、メーカーを対象に実施した「人材採用調査」で、女性管理職比率・男性育休取得率の回答結果がまとまった。

D 多くの企業から問い合わせがあり、各社の関心の高さがうかがえる。特に女性管理職比率で「算出の基準は何か」という質問が多い。厚生労働省の雇用均等基本調査では、「課長相当職以上」といった管理職の定義があるが、当社の調査では基準を明確にしなかったので、ばらつきはあるだろう。本来は基準を設けるべきだと思うが、今回はまず「建設産業界各社の女性管理職比率・男性育休取得率と各社の目標を明らかにすること」を主目的にしたため、あえて各社の基準で算出した数値をそのまま掲載した。1つの目安にはなるのではないか。

E 建設業の女性管理職の少なさが如実に表れた。でも、管理職への登用は女性か否かで決まるものではなく、性別に関係なくふさわしい人物が就くべきだろう。目標数値の設定も、目標ありきの人事になりかねずナンセンスという意見もある。ゼネコンでは新卒採用に占める女性の割合が20%を超える企業も多くなっている。このため、性別にかかわらず、管理職にふさわしい人材の育成を地道に続け、その結果、女性管理職比率が上がると良いね。

D 男性育休取得率は全産業平均を上回った。しかし、取得日数が少なかったり、取得したのに実際は仕事をしていたりする事例もある。それでは本来目指す、女性が職場で長く活躍できる環境づくりにはつながらない。数値は1つの目安ではあるが、数値を追うのではなく、実態に沿った取り組みが求められるね。

 
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