【記者座談会】大手・準大手ゼネコン中間決算/CCUS登録技能者100万人突破 | 建設通信新聞Digital

5月14日 火曜日

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【記者座談会】大手・準大手ゼネコン中間決算/CCUS登録技能者100万人突破

◆競争環境「明らかに変化」の声も

A 11日までに開示された大手・準大手ゼネコン26社の2023年3月期第2四半期の決算は、連結ベースで全体の半数を超す15社が前年同期からの「営業減益」となったね。資材価格の高騰の影響もあって各社が利益面で苦戦している印象が強い。

B もともと受注競争の激化によって採算が低下したところに資材価格の高騰による影響が追い打ちをかけている構図がある。売上高は積み上がっていくのに利益が上がりづらい構造になっている。

C 民間工事が中心となる建築を中心に資材価格の急激な上昇を思うように転嫁できていないということかな。

A 世の中全体でコスト上昇が社会問題となっていることからも、デベロッパーなど発注者サイドの理解は徐々に広がっているようだが、資材価格の高騰による追加・変更による協議や交渉は時間を要する部分がある。結果として現状で物価上昇のリスクを吸収できていない現実が浮き彫りになっている。

C 各社が潤沢な手持ち工事を確保している現状から「明らかに競争環境が変わってきている」という声もある。

B 背景には24年4月の時間外労働に対する上限規制の適用がある。技術人材も無尽蔵に存在しているわけではない。豊富な手持ち工事の消化を意識していく中で、ゼネコン各社はそれぞれ供給能力とのバランスを見極めながら、あくまで「適正な競争」にシフトしているようだ。

C いま受注する工事は上限規制が適用されて以降に進捗していくプロジェクトとなる。適正な工期で受注できなければ、この先の業績にも大きく影響を及ぼす。競争環境の変化は、それだけ各社が上限規制の適用に強い危機感を持っていることの証左とも言える。

いよいよ活用フェーズに本格移行

A 建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録技能者数が100万人を超え、大台に到達した。全技能者数の3分の1が登録したことになる。

B 本格運用から4年弱で到達した。赤字拡大を食い止めるために利用料金を引き上げるなど、道のりは決して平たんではなかったが、普及してきたことを表すデータの一つだ。21年度決算での単年度黒字化達成に続く節目だね。

C 建設業振興基金の谷脇暁理事長は「100万人突破は通過点である」と冷静に受け止め、引き続き全力で運営に当たると気を引き締めている。

D より多くの技能者や事業者、現場の登録がなければ、CCUSが建設業界共通の制度インフラとして機能を十分に発揮できないからね。

A 今後はどういう展開になるの。

B 登録に主眼を置いた段階から、活用していくフェーズへと本格移行する。旗振り役の国土交通省はCCUSを技能者の処遇改善につなげる方針だ。具体的には、技能や経験に応じて技能者の賃金が上昇するようにするため、今後、職種ごとにレベル別の賃金目安を示す考えだ。

C CCUSの活用による現場管理の電子化・効率化も進める。その一環として、CCUSのデータから施工体制台帳などを自動作成する機能の拡充に向け、システム改修費用を22年度第2次補正予算案に計上した。

D 国交省は、重層下請構造や技能者に公共工事設計労務単価相当の賃金が行きわたっていないといった、建設業が長年抱える問題をCCUSの活用で解決できると見ている。持続可能な建設業に向けた環境整備検討会でシステムの発展的な活用の可能性を検討するとしており、検討会の議論にも注目したいね。

建設キャリアアップシステムの普及と制度インフラとしての活用によって技能者の継続的な処遇改善に期待がかかる

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