【記者座談会】大手・準大手ゼネコン中間決算/大成建設がピーエス三菱を連結子会社化 | 建設通信新聞Digital

5月7日 火曜日

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【記者座談会】大手・準大手ゼネコン中間決算/大成建設がピーエス三菱を連結子会社化

◇上限規制も念頭に受注選別

A 大手・準大手ゼネコン26社(単体27社)の2024年3月期第2四半期決算はどうだったのかな。

B 連結では全体の9割を超える24社が前年同期比で増収となり、さらに10社が第2四半期として売上高が過去最高となった。豊富な手持ち工事をこなし、順調に完成工事高を積み上げている。単純に好調というだけでなく、単価の上昇も過去最高企業がこれだけ多い要因と考えられる。

C 単価の上昇の背景にある資機材や労務費の高騰が重しとなって、売り上げとは違って収益面は振るっていない。前期比で営業減益となったのは9社だが、さらに厳しかった前期からの反動増という企業もある。過去に受注した不採算案件が進捗しており、収益の改善は道半ばだ。建設プロジェクトが大型化・長期化していることも影響し、完全脱却まで1、2年はかかると聞く。

A 受注環境はどうなの。

B 手持ち工事が豊富にあることから競争は案件ごとによるようで、無理をしてまで取りにいくことは少なくなった。資機材価格の上昇分も昨年度の下期以降、反映できており、受注時の採算性は改善が進んでいる。

C 受注で言えば、時間外労働の上限規制の影響も無視できない。現場の生産性向上や外注化の取り組みは進めているが、各部門ごとに一定の限界量は設定していると考えられる。民間案件などは限界量に応じて、施主との調整や受注・見積もりの見送りといった判断をしているようだ。

D ある準大手ゼネコンは大手が見送った案件が持ち込まれ始めていると話していた。見送り案件なので好条件とは言いがたいようだったが。

A 受注環境は総じて悪くないようだが、上限規制を考えれば決して安泰とは言えないようだね。

協力業者でも上限規制対応を進めているため、その確保も厳しくなりつつある

◇事業拡大へ再編機運か

A そんな中間決算発表のさなか、驚きの情報が飛び込んできた。大成建設がピーエス三菱の株式の過半を取得して連結子会社化すると発表した。狙いはどこにあるのか。

E さまざまな点が挙げられるけど、プレストレスト・コンクリート(PC)橋梁上部工新設工事や高速道路の大規模更新・修繕工事を中心とする土木事業では、両社での人財交流、相互の顧客情報・技術情報の共有、専門工事業者ネットワークの活用、スケールメリットのある資材などの共同調達を行うことで、受注効率向上・施工体制拡充・収益性向上を図るとしている。

F 建築事業でも設計施工案件でのPC・PCa(プレキャスト)の積極採用やJVの設立、保有する特許・実施権の相互活用などにより、収益性向上も見込んでいる。

A 体制面の変化はあるのかな。

E 国内PC橋梁事業については、3年後をめどにピーエス三菱を中心とした体制に移行するための具体的な方策を決める予定だ。おおむね5年後に移管を協議するという。

F 今後、さらなる拡大が期待される洋上風力浮体基礎の共同研究開発などを行うことで、新たな市場での事業拡大も視野に入れているようだ。

A 大成建設以外でも、ミライト・ワンが国際航業の全株式を取得し完全子会社化すると発表したね。

G こちらは国際航業が持つ高度な空間情報技術を基盤とした企画提案・設計能力とミライト・ワングループのエンジニア能力とのシナジーを見込んでいる。
 
H 時間外労働の上限規制を控え、人手不足の懸念が高まっている。そうした中で事業拡大や強化を図ろうと考えれば、今後さらなる業界再編が進む可能性も少なくない。

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