◆利益面での苦戦続く
A 14日までに開示された大手・準大手ゼネコン26社(単体27社)の2023年3月期第3四半期の決算は、連結ベースで全体の半数を超す14社が前年同期からの「営業減益」となった。豊富な手持ち工事の進捗によって売上高が順調に積み上がっていく一方で、資材価格高騰の影響などもあり利益面での苦戦が続いている。
B 国内建築を中心に、いわゆる五輪特需の収束やコロナショックによる経済活動の停滞によって激しい受注競争が繰り広げられていた当時に受注した“低採算案件”が進捗してきていることも大きい。全体の傾向として、もともと受注段階での採算が低下していたところに、資材価格の高騰による影響が追い打ちをかけている。
C かねてから指摘されている利益が上がりにくい構造からなかなか抜け出せていないということかな。
B 実際に単体ベースでの完成工事総利益(粗利)率を開示している25社の平均は前年同期比0.9ポイント減の9.4%となっている。特に建築は前年同期と比較できる23社の平均が1.4ポイント減の6.3%となっている。建築に限定すれば、ほとんどのゼネコンが前年同期比で低下している。
C 依然として「受注競争は厳しい」という声がある一方で、「足元の受注段階での採算性は徐々に上向いている」という声もあるようだけど。
A 各社が潤沢な手持ち工事を確保している現状からすれば、「利益を度外視してまで無理に受注する必要はない」という心理が働くのは当然だ。物価高騰の影響がどこまで継続するのか、先行き不透明な部分もあるが、あくまでも「適正な競争」によって受注時の採算が改善していけば、徐々に利益面での苦戦から脱却する兆しも見えてくるだろう。
産業デベロッパーの位置付け鮮明に
A 三井不動産が、宇宙関連産業が集うプラットフォーム「クロスユー」を立ち上げたね。
B 4月1日付で同社の社長に就任する植田俊取締役専務執行役員は、就任会見で自社を“産業デベロッパー”と位置付け、特に力を入れる分野として宇宙を挙げていた。まさに新社長肝いりのプロジェクトだ。東京・日本橋に数多く整備してきたアセットを最大限活用し、宇宙関連産業と宇宙に関わりたい非宇宙産業を集め、つなげる場と機会を提供することで、今後の宇宙産業の旗手になるという意図がある。
C デベロッパー各社は、自社開発の施設にオープンイノベーション拠点を開設してベンチャー企業を集め、出会いの場を創出する取り組みを進めている。しかし、クロスユーはさらに一歩踏み込んで、ベンチャーかどうかにかかわらず、宇宙産業の集積地とイベントなどの出会いの場を用意することで新しい産業を生みだそうとしているように感じる。
A それはデベロッパーにとってどんなメリットになるの。
B 土地を確保して建物を建てて売る・貸すという従来の業態が、明らかに変わろうとしている。端的に言えば、テナントの囲い込みということになるのだろうが、単なるテナント集めのサービスの提供を超えた、新産業の支援者になるということだと思う。
C この取り組みがオフィスや商業施設の開発というハード事業と相乗効果を発揮して企業の成長につなげるのが狙いだと思うが、果たしてこの取り組みが売り上げ・利益のポートフォリオにどんな変化を与えるのかという点が気にかかる。そして、こうした動きに建設産業はどうコミットできるのかという点にも注目していきたい。