【記者座談会】文化財防災体制を強化/首都高が日本橋地下化の工事契約で新方式 | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

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【記者座談会】文化財防災体制を強化/首都高が日本橋地下化の工事契約で新方式

A 文化財防災センターと建築、土木の4団体が歴史的建造物の防災に関する協力協定を結んだ。ポイントは。

B 発災時の迅速な初動対応とともに、災害の規模にかかわらず被災地の状況に応じたきめ細かな復旧支援が可能となることだ。文化財防災センターは頻発する各種災害から文化財を守る専門組織として、国立文化財機構に2020年10月に設置された。都道府県と連携して地域防災体制の構築に取り組むほか、独自の予算で被災した文化財の救援活動や応急処置にも主体的・機動的に対応できる。

C 今回の協定は過去の数次にわたる災害の経験と教訓が反映されている。調査対象となるのは主に都道府県と市町村指定の文化財建造物や登録有形文化財(建造物)、それに未指定の歴史的建造物を加える。阪神・淡路大震災を契機に日本建築学会が整備を進める歴史的建築総目録データベースを下敷きに、地域にとって貴重な文化遺産を取りこぼすことなく後世に継承しようとするものだ。

B 東日本大震災では膨大な量の文化財が被災し、その復旧支援に多くの機関や関係者が携わった。その要となったのが文化財ドクター派遣事業であり、熊本地震でも効果を発揮した。事務局を担ったのが日本建築学会と日本建築士会連合会、日本建築家協会だ。これに土木学会を加え、文化財防災センターとの5者が平常時から防災手法に関する情報を共有するなど連携を強化し、有事の際には臨機にドクターチームを構築する。この枠組みができた意味は大きい。

D 災害時の支援はややもするとボランティアとしての側面が強調されるきらいがある。地震や風水害が全国各地で毎年発生し、火災への備えも求められる中で、文化財保護に対する専門家の立ち位置が報酬面も含めてより明確になっていくことを期待したい。

東日本大震災から11年となる「3.11」に東京・上野の東京文化財研究所で開かれた調印式


2者の実施設計で優れた技術提案採用

A 話は変わるけど、首都高速道路会社が日本橋区間地下化事業の本体工事3件で総合評価方式の新契約手法「技術選抜設計承認方式」を試行導入すると発表したね。

B 1番の特徴は、優れた技術提案を幅広く採用するために、2者が実施設計を担うことだ。まず、技術提案書の評価点が高い上位2者を段階選抜者として選定し、それぞれと限定的な実施設計業務の契約を結ぶ。2者それぞれが実施設計、見積もり条件合意、価格ヒアリングなどを経て最終技術提案書を提出する。最終技術提案書を審査して算出した技術評価点と価格評価点を合計して、最終的な落札者を決める。

C 日本橋地下化事業の本体工事は類似工事がほとんどなく、厳しい制約条件での施工となる。首都高は民間企業の施工ノウハウが不可欠と判断し、新方式を採用した。

A 受発注者の負担を軽減する工夫も見られるね。

D 各工事の工期が長いことも特徴で、最長は15年にもなる。設計変更協議の円滑化と大幅な設計変更への対策として、新たに「総価契約・入札単価合意方式」も採用する。工事契約後に見積もり条件で合意した工種を自動的に個別単価合意する。配置予定技術者に複数の候補技術者を記載でき、追加や削除も認める。

C このほか、競争性を確保するために、特定JVと異工種JVの構成では、土木工事2000点以上と鋼橋工事1700点以上の企業はそれぞれ1社までとした。

B 10日に開いた新契約手法の企業向け説明会には、39社から100人近くが参加し、関心の高さがうかがわれた。本体工事の初弾となる「常盤橋地区トンネル工事」は4月下旬に公告する見通しだ。

 
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