【記者座談会】インフロニアHDが東洋建設をTOB/全建の「地域建設業SDGs経営指針」 | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【記者座談会】インフロニアHDが東洋建設をTOB/全建の「地域建設業SDGs経営指針」

A インフロニア・ホールディングス(HD)が、東洋建設をTOB(株式公開買付)で完全子会社化すると表明した。

B インフロニアHDの岐部一誠社長は、最初から東洋建設のTOBは念頭にあったかもしれない。会見では「前田建設、前田道路、前田製作所という上場3社が一緒になること自体が非常に珍しく、簡単なことではない。それが思ったよりスムーズに進み、4社でもうまく経営できるのではないかと考えた」と説明した。会見後に「(インフロニアHD設立を表明してから)もう1年近くも経ったからね」と冗談めかして言っていた。一般的な上場企業のスピード感とまったく違うと実感したよ。

C 東洋建設はこれまで、前田建設との関係を聞くと、『相互信頼』と『独立・協調』をバックボーンとした提携であることを強調してきた。経営も安定し、昨年末から年始にかけては大型設備投資も発表していたし、独立の方向に進むものかと思ったが。

B 将来的な公共事業の減少や時間外労働の上限規制に対応するための生産性向上、担い手確保を遠因とした業界再編がささやかれる中で、他産業との連携も含めて準大手1社だけでの対応が難しい環境になりつつある。そう考えれば、これまで支援を受けてきた前田建設に付くのが自然な流れだろう。今回のTOBで、インフロニアHDの孫会社から子会社に格が上がる。むしろ「経営状況が良くなって(前田建設と)対等な立場に立てるようになった」という東洋建設の武澤恭司社長の言葉は本音ではないか。加えて、洋上風力発電事業への対応など設備投資がかさむ中で、発行体格付「BBB」の東洋建設にとって「A+」のインフロニアグループに参画することで資金調達力が高まり、投資コストも抑えられるという点も受諾の大きな理由ではないか。

東洋建設へのTOBについて会見するインフロニアHDの岐部社長(左)と東洋建設の武澤社長

企業経営と地域経営の持続性向上に直結

A 話しは変わるが、全国建設業協会(奥村太加典会長)が『地域建設業SDGs(持続可能な開発目標)経営指針』をまとめた。地域建設業がSDGsに取り組む意義は。

D SDGsと自社の実績を照らし合わせることで、社会課題に対する強みや今後の優先事項が把握できる。その結果を反映した経営戦略は主体的な企業活動につながり、ステークホルダーとの協働、ビジネスチャンスの創出が期待できる。地域社会への貢献度が深まれば、業界と個社がイメージアップし、担い手の確保・育成にも寄与していく。

A 企業経営と地域経営双方の持続性向上に直結するということだね。

E SDGsと地域建設業の関係性をひも解くと親和性の高さがうかがえるけど、取り組みが進んでいるようには見えない。

F SDGs自体に対する理解度の低さが背景にあり、食わず嫌い感が否めない。そうした誤解を払拭(ふっしょく)するため、経営指針では、既存の経営・業務内容を17の開発目標と結び付ける「後付けマッピング」を紹介している。

E この考え方はSDGsが身近なものであることを実感させてくれる。ただ、SDGsの最終目標が“変革”である以上、後付けマッピングから自社の現状を洗い出すことで見える経営課題をSDGsに落とし込む「先付けマッピング」が求められている。

D SDGsを難しく捉える必要はない。現下の社会経済情勢を踏まえると、現状維持では企業、地域ともに立ちゆかなくなる可能性が高い。企業経営と地域経営を担う地域建設業だからこそ、SDGsに基づく持続的発展が不可欠となる。この指針はその手引きのようなものだ。

 
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