【渡辺甚吉邸を移築オープン】新たな価値創出にこだわる/前田建設 | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【渡辺甚吉邸を移築オープン】新たな価値創出にこだわる/前田建設

 前田建設は、昭和初期の日本住宅建築の傑作といわれる「旧渡辺甚吉邸」を茨城県取手市のICI総合センター内に移築した。名誉館長には建築家・藤森照信氏が就任し、21日に現地でオープニングセレモニーを開いた。

甚吉邸の前でテープカットする左から前田社長、藤森氏、藤井市長

 セレモニーで藤森氏は1950年代に同邸を発見した経緯を紹介してオープンを祝ったほか、取手市の藤井信吾市長は「末永く多くの人に愛される施設なってほしい」とあいさつし、前田建設の前田操治社長とともにテープカットした。前田社長は保存復原作業を手掛けた風基建設に謝意を示した上で、「隣接地に新設したW-ANNEX棟と一体となって新しい価値が生まれる。甚吉邸移築を単なるCSR(企業の社会的責任)にとどまらせず、そこから生まれる新たな価値にこだわっていきたい」と謝辞を述べた。

 渡辺甚吉邸は、岐阜県の名家である同氏が私邸として34年に東京都港区白金台に建設した本格的なチューダー様式の邸宅。住宅専門会社の技師として活躍した遠藤健三と山本拙郎が設計、細部装飾には今和次郎が参加した。
 邸宅は、2015年には空き家となっていたが、18年に建築史家などで構成する解体保管検討委員会が保存のための解体と部材保管を前田建設に要望した。前田建設は内部の要所を3Dスキャンと360度カメラで記録した上で18年11月から解体工事に着手し、部材を保管・研究して20年9月に復原工事に着工した。

 正面の屋根の装飾部の木材は、職人による復原だけでなく、欠損・腐食した部材を超高精細3Dスキャニングでデータ化し、多軸加工機「WOODSTAR」を使った彫刻装飾の復原も試みた。構造体は日本家屋でありながら、梁や壁などを化粧材として作り付けるなど和洋が混在した建物で、部屋ごとにタイルや木材を使い分けて多様な部屋で構成している。部材の復原では、できるだけオリジナルの素材を活用しつつ、漆喰(しっくい)天井のレリーフなど保存が難しい部分は、残存するレリーフをシリコン型枠で複製して復原した。W-ANNEX棟は、W・RC・S混構造延べ327㎡で、前田建設とツバメアーキテクツが設計した。

匠の技で復原した天井レリーフ

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