【中外製薬の大規模研究拠点 10月完成へ大詰め】300m大空間で多様な交流実現 | 建設通信新聞Digital

5月5日 日曜日

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【中外製薬の大規模研究拠点 10月完成へ大詰め】300m大空間で多様な交流実現

 中外製薬の大規模研究拠点「中外ライフサイエンスパーク横浜」(横浜市)の建設工事が大詰めを迎えている。工事進捗率は約98%。10月の完成に向け外構工事などを進めている。約1000人が働く創薬の一大拠点となる。研究者間の交流を促すため、固定席は設けず、好きな場所で仕事ができるようにする。その象徴が通路で仕事場でもあり、息抜きもできる約300mの大空間「スパイン」だ。

進捗率は98%。外構工事が進む現場。

 建設地は柏尾川を挟み西側と東側に分かれる2つの敷地。西側に研究棟5棟や居室棟など計16棟、東側に研究棟1棟やグラウンドなどを整備し、規模は総延べ約12万㎡となる。
 西側には多数の棟が立ち並ぶが、敷地中央を南北に貫く長さ300mの通路「スパイン」で各棟をつなぎ、1つの建物のように感じられるようにする。スパインには、さまざまな形態のワークスペースを随所に設けるだけでなく、場所によって内装の色彩や色温度も変えている。これにより、その時々の気分に合わせて好きな場所を選び、仕事や会議ができる。休憩することや会話を楽しむことができるほか、軽食スペースも設ける。
 高い集中力が求められる仕事の特性上、スパインにいるときはくつろげるように、内装は木質を採用し、丸みを持たせることで柔らかい印象の空間に仕上げている。
 スパイン上部は屋上緑化しており、ここでも仕事などができる。同空間は研究棟など各棟に囲まれているため、外空間ではあるが外部からの視線が気にならない。


 オフィスとなる居室棟にも固定席は設けず、フリーアドレス制とした。
 地域との調和を大切にし、「昔からあったような」周りになじむ建物を目指した。外観は、周囲に立ち並ぶマンションの色と同系色のアースカラーを取り入れた。建物を1つの大きな箱にするのではなく、分節することで圧迫感の低減に努めている。
 地域住民が自由に利用できる広大な緑地や提供公園のほか、 講座などに使用するバイオラボを設け、 地域に開かれた施設にする。災害時には避難所として解放する。
 環境に配慮するため、居室棟には画像センサーを導入する。空調・照明と連動させることで、人の存在や密度を感知し、風量調整や照明の調光、オンオフを自動化する。一部を除き建物は免震構造となり、災害への備えも万全だ。物流施設などに使われている免震装置を活用しており、荷重条件が変わってもそのまま利用できる。
 大木光馬中外製薬研究本部研究業務推進部長は「新研究所は研究員が生き生きと働ける場にする。イノベーションを加速させるためには研究員同士の交流が重要だ。そうした思いを設計に込めている。この研究所から生み出した薬を世界に発信していきたい」と話す。
 主な設計は日本設計、施工は鹿島が担当。2019年8月に着工した。構造はS一部RC造、階数は西側が地下1階地上6階建て、東側が4階建ての総延べ約11万9500㎡。建設地は西側が戸塚区戸塚町字三ノ区216-1ほか、東側が上倉田町字堀内前79-1ほか。敷地面積は計15万8600㎡。



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