【記者座談会】日建協が春闘結果を発表/梅雨明け一転、豪雨災害 | 建設通信新聞Digital

5月9日 木曜日

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【記者座談会】日建協が春闘結果を発表/梅雨明け一転、豪雨災害

A 建設産業界の35の労働組合が加盟する日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)が、ことしの春闘の交渉結果を発表した。長引くコロナ禍や世界的な原材料価格の高騰など、景気の面では不安要素が山積しているけれど、どんな状況になっているの。

B まだ妥結に至っていない組合もあるため、賃金交渉の中間報告という形だが、状況としては良い結果と言えるだろう。会社の業績が好調というよりは、政府が昨年末に打ち出した「総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置」が大きくプラスに寄与したことで“官製春闘”の側面が色濃く出たと言える。

C 24組合が基本給のベースアップ(ベア)を獲得した。なんと、このうちの10組合は、組合側の要求水準を超える会社回答となった。過去にもまれに要求超えの回答が出たことはあったが、これだけ相次ぐのは極めて異例という。組合がお願いした以上の金額を支払うというのだから、会社側として加点措置の適用を受けるために必要となるベアの水準をあらかじめ決めていたのだろう。

B ちなみにベアの単純平均額は5323円、加重平均額は3923円で、定期昇給を合わせた昇給額は単純平均で1万4109円、加重平均で1万3842円になっているそうだ。

C ことしは大卒初任給を引き上げる動きも目立った。一部の大手ゼネコンによる初任給アップの表明を受けて、優秀な学生を獲得するために各社が追随した。

D ここ数年はおおむね良好な組合成果を上げていたが、やはり今後は資材価格急騰などの影響が気になる。今期は決算にも影響するだろうし、労使交渉も正念場になるだろう。

災害頻発、全国各地に「被災地」存在

A ところで記録的な早さの梅雨明けから一転、先週から今週にかけて全国各地で豪雨災害が発生している。

B 宮城県内では15日から降り続いた大雨が観測史上最大の時間雨量を記録した。県内各地で浸水被害や道路の流出、落橋などの被害が相次いだ。

C 宮城県は2019年の東日本台風で甚大な浸水被害があったばかり。その緊急治水対策プロジェクトが進められている中で、新たな水害に見舞われた地元住民の心中は察するに余りある。

A それだけ自然災害が激甚化・頻発化しているということかな。

B これだけ自然災害が多発すると、全国のどこかで常に『被災地』が存在することになる。被災地の復旧・復興と、全国各地で起こり得る自然災害への防災・減災、国土強靱化の推進は絶えず実行していく必要がある。

C 国土強靱化の推進や全国防災の観点から言えば、対策の原資となる継続的な「財源」の確保と、対策を実行するための建設産業を含めた「体制」整備も重要なポイントになるだろう。

A インフラの老朽化や頻発化する自然災害に対応するための「体制」整備としては、技術職員が不足する行政サイドの課題も多い。市町村などマンパワー不足に悩む自治体を支援する国の役割がますます重要になっている。

C 被災地で応急復旧に当たる建設企業も、これまでのように「使命感」だけで役割を果たしていくことはできない。災害対応の最前線で奮闘する地域建設業が安定的・持続的に“地域の守り手”を担っていけるだけの事業環境の整備が求められる。

宮城県大崎市で落橋した丸山橋の被災状況調査 (提供:東北地方整備局)

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