【国立競技場向けナイター照明】「見やすい」を追求/パナソニックエレクトリックワークス社 | 建設通信新聞Digital

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【国立競技場向けナイター照明】「見やすい」を追求/パナソニックエレクトリックワークス社

 

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 パナソニックエレクトリックワークス社(大阪府門真市、大瀧清社長)は、国立競技場向けに開発したナイター照明を報道陣に公開した。視聴者とプレーヤーの両方から見やすい照明環境を実現するため、「世界に向けた高画質映像の配信」「トップアスリートへの最適な光環境の提供」を設計コンセプトに掲げた。世界最高水準とするナイター照明は、国立競技場で開かれるさまざまなイベントを支えている。

■世界に最高水準の高画質映像を提供
 国立競技場に採用したナイター照明は、国際放送に対応する世界最高水準の高照度・高均斉度を持つ。4K・8K放送に対応する色再現性のほか、スーパースロー撮影に対応するために光のちらつきを抑えるフリッカーフリーを実現した。
 広色域での4K・8K放送は、ハイビジョン放送に比べて再現できる色域が広がるため色再現性が高く、映像の色差に大きな影響を与える。そこで同社は、4K・8K対応投光器を開発した。NHK技術研究所との共同研究により、Ra(平均演色評価数)90以上、R9(特殊演色評価数)80以上に基準を明確化した。Raは自然光にどれだけ近いかを示す指数で、R9は赤色の見え方を表す。ともに値が100に近いほど自然光に近い見え方をする。
 照明の設計を手掛けたライティング事業部エンジニアリングセンターの栗本雅之専門市場エンジニアリング部屋外照明EC課長は「R9の値を引き上げることが、4K・8Kに対応するために必要なファクターになる」と話す。
 ちらつきが発生しない電源装置を開発し、フリッカーファクター(光出力における周期変動の相対的な尺度)を従来の3%以下から1%に低減したほか、漏れ光対策器具の開発などによりカメラフレアを徹底的に抑制している。フリッカーファクターを1%以下に抑えると、ちらつきを大幅に抑制できるという。

LED投光器ナイター照明「スタジアムビーム 4K8K放送対応」

■トップアスリートのパフォーマンスを支援
 トップアスリートが最高のパフォーマンスを発揮できるように、グレア(まぶしさ)を徹底的に抑制する光学レンズを設計した。光源からの光を絞り、場内を効率的に照らすことができる狭角配光を実現した。光の出力を抑えた小型レンズを多数配置した多眼レンズ構造を採用している。
 グレアの抑制対策のため、心理的に不快感を引き起こすが視力能力の目立った減退に影響が少ないGR(不快グレア)と、視界の能力減退に影響を及ぼす直視グレア(減能グレア)を事前に検証した。国際陸上競技連盟(WA)、国際サッカー連盟(FIFA)、国際照明委員会(CIE)、日本産業規格(JIS)の各推奨基準のGR50を下回るGR40以下を目標として3次元シミュレーションで検討し、GRの実測最大値が37となった。不快グレアだけでなく直視グレア(減能グレア)も抑え、快適な競技空間を実現した。
 照明器具を直視した時に感じる減能グレアを評価し、VR(仮想現実)を使って検討して最適照射角を決めた。VRでは、直視グレア評価、器具設置状況確認、照度・照射ポイントの検討、光害の評価などを実施した。

■国立競技場で活躍するLED投光器
 国立競技場には、ナイター照明「LED投光器」を1300台納入している。照明器具は、WAや日本陸上競技連盟(JAAF)、日本サッカー協会(JFA)の各基準にのっとって配置、台数を決めた。WAは1192台、JAAFは608台、JFAは424台となる。
 栗本課長は「オリンピック放送機構(OBS)を基準に設計している。全てのナイター照明にLEDを採用したのは、OBSが実質的に活動を開始した2008年の北京オリンピック以来、東京2020オリンピック・パラリンピックが初となる。演色性において、4K・8Kに対応できるのは国立競技場だけだ」と技術の高さをアピールする。「従来と同じ明るさ比で、約50%の省エネを実現した」と省エネ性能の高さも強調する。

7月26日に報道陣向けに実施した見学会ではそれぞれに対応するライティングを披露した(陸上モード)


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