360度カメラの画像を携帯端末で確認する様子を動画で紹介。ご視聴はこちらから
首都高速道路会社は、ドローンや360度カメラ、DX(デジタルトランスフォーメーション)などの新技術を活用し、高速道路の維持管理を高度化する。ドローンや点検ロボット、昇降式全方位カメラの開発を進め、2021年度から導入している。本格運用を目指し、現在は東京都江東区から江戸川区に架かる荒川湾岸橋の点検で試行している。
24日に同橋で新技術の実演などを報道陣に公開した。首都高速道路会社の増井隆保全・交通部点検・補修推進課長は「首都高全体のうち、約63%に当たる約206㎞が鋼橋だ。老朽化で劣化が進み、維持管理の高度化が急務となっている。新技術の開発は生産性向上のほか、技術者不足にも対応する」と説明する。
同橋は1978年1月に供用した。橋長840m、総鋼重約1万3500tで、約1700個の部材で構成するトラス橋だ。これまでは点検通路上や船上から双眼鏡などで目視点検し、異常があればロープで接近して詳細調査を実施していた。しかし、目視点検ができない箇所へのアプローチが課題となっていた。
新技術の活用で目視困難箇所の点検が容易となった。近接目視が困難な箇所では、部材上を走行するトラス橋点検ロボットを活用する。360度カメラを搭載し、床版下面や縦桁を点検する。視認範囲は目視点検と比べて最大約54%向上する。走行路がない点検ロボットの視認不可範囲などは、橋梁点検用ドローンを使用する。仮設足場を設置しづらい河川上などの点検で活用する。
鋼製橋脚柱内部や点検通路直下は、昇降式全方位カメラをつり下げて点検する。一度の撮影で360度を撮影でき、損傷の見落としを防ぐ。各種カメラの映像はタブレットで確認する。
DXを推進するため、ICTを活用した維持管理システム(スマートインフラマネジメントシステムi-DREAMs)や3Dハンディースキャナー、音声入力による点検結果報告書作成システムも導入している。
同橋は老朽化や塩害などの鋼材腐食、一部部材で断面欠損や破断などの深刻な損傷が発生している。大規模更新・修繕及び機能強化に関する技術検討委員会(委員長・前川宏一横浜国大都市イノベーション研究院教授)では、大規模修繕などの抜本的対策が必要としている。