同社の広域無線ネットワークシステム『FalconWAVEおくだけWi-Fi』は、工事現場のような電波の届きにくい場所を簡単に広域Wi-Fi化する。現場事務所の有線LANに親機を接続し、子機を通じて周辺に無線通信環境を提供するが、周囲100-200mに対応できるのはアンテナメーカーである同社の強みからだ。
建設現場への提供を開始したのは4年ほど前。これまでの導入実績は100現場を超える。ダムやメガソーラーなど山間部の工事を中心に採用を伸ばしているが、トンネル坑内のような閉ざされた場所の導入事例も多い。内径2mのトンネル工事では300m間隔、大断面トンネルであれば500m間隔で中継ポイントを設けながら坑内をWi-Fi化する。藤本事業部長は「数珠つなぎのように進めていけば、トンネル形状にもよるが、最大1200mの長さにも対応できる。リニア中央新幹線のような大深度・長距離トンネルでも、ぜひチャレンジしたい」と強調する。
◆アス合材の温度管理にNIPPOが導入
最近は、国交省直轄工事を中心にICT活用の流れが拡大し、現場を広域的にWi-Fi化する要求が強まりつつある。例えば道路舗装工事では、NIPPOがアスファルト合材の温度管理に導入し、生産性向上につなげている。同社総合技術部生産機械センターの相田尚機械開発課長は「ICT活用のベースになる」と、広域Wi-Fi化の必要性を強く訴える。
道路舗装工事では工事時間の短縮と工事精度の品質向上が求められる中、特にアスファルト合材の温度管理では専門の管理員がダンプの荷台に上がり、到達温度を判定しており、これを自動集計に切り換えることが可能になれば大幅な省力化が実現する。アスファルト積載ダンプカーに設置した温度センサーのデータをリアルタイムに取得するため、現場のWi-Fi化が前提だった。
当初はダンプに市販のポケットWi-Fiを装備する方法を模索したが、車両は40台にも達し、導入コストが予想より上回る。敷き均しとダンプ到着のタイミングを把握するため、自社のクラウド管理システムと連携させるにはフィニッシャーの進行に合わせ、周辺を常にWi-Fi化する必要があった。ダンプにはWi-Fi機能付き温度センサーを装着し、到着と同時にリアルタイムに温度管理が実現する。現場は温度管理者を置く必要がなく、その分の省人化も実現している。
「おくだけWi-Fi」の価格は親機・子機1セット約85万円。NIPPOは長距離基幹電送が可能な上位製品(4.9G-MP)を含め、全3セットを購入済み。日本電業工作は、生産性向上の手段としてICT活用が広がる建設現場を販売戦略の重点ターゲットに位置付けている。