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【世界でニーズ高まる核シェルター 】ゼネコンの開発力に期待/命を守るシェルター協会代表 深月ユリア氏

最終更新 | 2022/11/08 14:01

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深月氏

 ロシアのウクライナ侵攻が続く中、核シェルターに対するニーズが世界的に高まっている。一方で、日本での普及率は格段に低い。命を守るシェルター協会代表の深月ユリア氏は「核戦争や原発事故による放射線だけでなく、災害から命と財産を守るために有用だ。シンポジウムなどの場を通じて、より多くの一般家庭や企業への普及に努める。国や市町村、整備を担う建設業界の皆さんにも積極的に取り組んでいただきたい」と呼び掛ける。

--協会設立の経緯は
 日本で育ったが、ウクライナ生まれのポーランド人の母と祖母を持つ。ウクライナが直面する窮状は、先の大戦で旧ソ連軍とナチス・ドイツ軍の侵攻を受けたポーランドにとっても人ごとではない。もし台湾有事が起きれば、日本も無傷ではいられない。かねてから日本の有事への対策不足を危惧(きぐ)していたこともあり、日本国内に核シェルターを普及させるため、2月に核シェルター普及協会を立ち上げた。

--なぜシェルターが必要か
 万が一、日本に核兵器が投下された場合に想定される被害は深刻だ。最新の核兵器は、広島・長崎型原爆の何万倍、何百万倍もの放射線を放出するといわれている。放射能減衰速度は非常に速く、爆発後の少なくとも1週間から2週間程度で、放出する放射性物質は1000分の1程度になる。その危険な期間に放射性物質を経口摂取しない、肺へ吸入しないことが重要だ。2週間身を潜められる手段の一つとして、核シェルターが有効だ。
 全世界で439基の原子力発電所が稼働しているが、その約1割の原子力発電所が日本に集中している。原発事故が起きても、居住環境に放出された放射性物質から身を守る核シェルターがあれば一時的に避難できる。地震、津波、火災への備えとしても有効だ。

--日本での普及率は

世界の核シェルター普及率


 日本は世界唯一の被爆国だ。加えて、ロシアや北朝鮮、中国という核保有国に囲まれ、本来は率先して核の脅威に備える必要があるにもかかわらず、日本の核シェルターの普及率はわずか0.02%と低い。世界に目を転じれば、スイスやイスラエルが100%、ノルウェーも98%と高く米国もそれに近い。これ対し、日本の普及率は突出して低い。富裕層が家庭用に購入する程度だ。

--世界で流通している核シェルターとは
 さまざまなタイプがある。現状ではイスラエル製が大半を占め、スイスや米国、ドイツ製が流通している。輸入販売会社が最も多く取り扱っているのは、住宅や社屋の新築の際に地下に埋めるタイプだ。頑丈だが、日本の家屋で新しく施工すれば費用は1000万円以上、工期も数カ月を要する。
 ほかにも、住宅や社屋の新築時に、地上の空きスペースに併設するタイプがある。地下設置型ほどの耐衝撃性はないが、放射能や毒ガスをはじめとするCBRNE(化学兵器・生物兵器・放射性物質・核兵器・爆発物)や自然災害から身を守ることができる。機種にもよるが、500万円を超える程度だ。

住宅や社屋の新築の際に地下に埋めるタイプ。このタイプが最も頑丈だ


住宅や社屋の新築時に併設して地上の空きスペースに建てるタイプ。地下設置型ほど核爆発の衝撃に耐えられないが、CBRNEや自然災害から身を守ることができる

--公共の地下空間を活用することは
 こうした方法に限らず、空気ろ過装置を設置することで、既存施設の機能をそのまま維持しつつ、地下空間をシェルター化する方法も有効だ。日本の大都市には地下鉄や地下街が数多くある。核ミサイルが打ち込まれたら、地下街に加えて地下鉄や地下駐車場に避難できるという意見もあるが、地下にスペースがあるだけでは核シェルターとして機能しない。空気ろ過器など専用の換気設備によって空間を密閉できなければ、爆発から身を守れても命を維持することはできない。吸入や経口摂取などで体内に放射性物質が取り込まれることで、体の内側から放射線を受けてしまう内部被爆があるからだ。
 地下設置型に比べて耐衝撃性は劣るが、空気ろ過装置なら約300万円ほどで購入可能となり、CBRNEから身を守ることができる。複雑な設計は不要でコストも抑えられる。

大型施設、地下空間など既存の環境をシェルター化する空気ろ過装置。放射能、生物兵器や化学兵器など全てを吸着し、きれいな空気のみを入れることで区画内の人々がガスマスクや防護服を着る必要がない。

--普及に向けての課題は
 いずれにしても整備費用が高額になるため、政府に補助金の創設を陳情している。個人住宅の新築にあわせて核シェルターを設置した場合の優遇措置などが考えられるだろう。
 目下の課題は、ろ過装置の不足だ。シェルターに必須のろ過装置も国内で製造している企業がほぼなく、現状では大半を輸入に頼っているが、世界中でろ過装置の品薄傾向が続いている。加えて円安が急速に進行し、導入しようとしても費用がかさんでしまう。研究開発や施工面で高い技術力を持つ日本のゼネコンの皆さんに、開発の協力をお願いしたい。地方自治体へのアプローチも進めていく。
 世界のパワーバランスが激変する中、平和外交も重要だが、核兵器を所有していない国にとって核シェルターは絶対に必要だ。国は国民の生命と財産を守り、不測の事態に備えなければならない。政府には整備に本腰を入れてもらいたい。

【協会概要】
▽設立=2022年2月
▽所在地=東京都港区赤坂1-1-17細川ビル811
▽役員=(理事)濱口哲充氏、齋藤学一氏、酒生文弥氏、アレクサンドル・カイリス氏、ロバート・ブランディーズ氏、神山清明氏、濱川一郎氏、
(顧問)石破茂氏、原田義昭氏
▽事業内容=核シェルターの普及活動、セミナー・イベントの企画運営、メディアの企画制作

※「核シェルター普及協会」(取材当時)は10月より「命を守るシェルター協会」に名称変更しました

 

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