【BIM未来図 仮設リース業のいま】杉孝(中) 「手軽感」重視のモデルづくり Revit扱う二刀流育成 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【BIM未来図 仮設リース業のいま】杉孝(中) 「手軽感」重視のモデルづくり Revit扱う二刀流育成

 「BIMをきっかけに現場で足場がどう組まれていくかをイメージしながら設計する意識が芽生えてきた」。杉孝(横浜市、SUGIKO)の吉川聖武設計課課長は、広がり始めた設計担当者の意識変化を実感している。ゼネコンに足場モデルを提供するようになって3年が経過し、社内のBIMに対する向き合い方も変化している。

足場がどう組まれるかイメージして設計する意識が広がっている


 設計課では、現場と密接に連携する最前線の設計担当が中心になり、BIM対応を進めている。普段はオートデスクの汎用CAD『AutoCAD』を業務ツールとして使っているが、BIM案件についてはBIMソフト『Revit』で対応しているため、社内ではRevitも扱える“二刀流”の設計担当を育てている。作図業務を担うベトナム子会社でも、Revitを扱えるオペレーターを増やしており、グループを挙げてBIMへの対応力を引き上げている。

 現在のBIM対応案件は年100件を超える。吉川氏は「この規模であれば十分に対応できるが、今後さらに案件数が増えれば、体制を拡充していく必要がある。いまは最前線で活動する設計担当の全てが“二刀流”になれるよう、今後も人材育成に力を入れていく」と強調する。

 CAD図面と足場モデルデータの違いは、3次元による視覚的な効果だけではない。施工ステップまで表現でき、時系列で足場がどう組まれていくか、そのイメージを共有できる点もBIMの利点だ。とび職を含め現場関係者と作業の流れをリアルタイムに確認できる。技術営業部デジタルサービス推進課の三宅祥子課長は「足場モデルを有効に使ってもらうためにも、ニーズを把握し、現場目線の足場モデルづくりに力を注いでいる」と語る。

 足場モデルづくりで心掛けているのは「手軽感」と、両氏は口をそろえる。年間100件に達するBIM案件だが、これは同社が手掛ける年間件数の1割にも満たない。9割以上の案件はAutoCADを使い、2次元ベースでものづくりを進めている。「BIMでも同等のスピードで作業できなければ、生産性向上のツールとして社内に浸透していかない」と考えている。

 手拾いで進めていた数出し作業は、足場モデルを使えばワンクリックで完了するようになった。手拾い作業は1工区単位で1、2時間かかっており、BIM現場の作業負担は大幅に軽減している。ただ、足場モデルの作成時間については、まだCAD作図よりも時間がかかってしまうのが現状だ。

 足場の計画パターンは無尽蔵で、部材点数も多い。より効率的にモデル化できる仕掛けとして、セットファミリー化の試みも進めているが、足場の計画は変更が頻繁にあり、修正への対応が難しいという課題もある。三宅氏は「BIMの完全導入にはまだ多くの課題がある」と明かす。モデルから出力した申請図面の精度向上も乗り越えるべき重点課題の一つだ。

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