【TOTOギャラリー・間「How is Life?」展】「成長なき繁栄」へ多彩な視点と気づき | 建設通信新聞Digital

5月14日 火曜日

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【TOTOギャラリー・間「How is Life?」展】「成長なき繁栄」へ多彩な視点と気づき

◆建築の価値を根本的に立て直す

 気候変動や社会格差、感染症拡大による世界情勢の変化など、さまざまな課題に直面する今日、成長を是としたこれまでの暮らしに疑義を差し挟み、生活者がそれぞれの当事者性のもとに暮らしを見直すための議論を喚起しようという企画展「How is Life?-地球と生きるためのデザイン」が東京都港区のTOTOギャラリー・間で始まった。

 同ギャラリー運営委員で今回のキュレーターを務める建築家の塚本由晴氏(東工大教授、アトリエ・ワン代表)は、「われわれが直面する事態はより深刻であり、成長なき繁栄という概念の方がいまの暮らしを考える上で本質的ではないか」と指摘し、「経済合理性の中で解体された建築の価値を根本的なところから立て直す必要がある」と企画に込める思いを語る。

 同ギャラリーの企画展は、メッセージ性のある展覧会として5年ごとに開催しているが、コロナ禍の影響で今回は7年ぶりとなる。この間、運営委員となった塚本氏と千葉学氏(東大教授、千葉学建築計画事務所主宰)、田根剛氏(Atelier Tsuyoshi Tane Architects代表)、建築史家のセン・クアン氏(東大特任准教授)の4氏をキュレーターに、「この時期だからこそ、やるべきことは何か」を考え、20年9月以降、30回を超えるキュレーター会議を重ねたという。
 「最初に4人が合意したことは、持続可能な開発、持続可能な成長で本当にいいのかということ」と塚本氏は語る。「暮らしを見直す、生き方を考え直すチャレンジをしている」事例をリサーチし、古今東西の21プロジェクトを集めた展示は「どこに建築があるのか驚くようなラインアップになっている」とも。

キュレーターを務める(左から)田根氏、千葉氏、塚本氏、セン・クアン氏

 塚本氏自ら当事者として里山再生に取り組む千葉県鴨川市の「小さな地球」や、千葉氏が「自転車乗り」の視点から既存の都市を「診断」し「処方」を提案する「Bicycle Urbanism」、田根氏が紹介するフランスでの農業と共存するパリと周辺都市の未来像を提示する展覧会やプロジェクト、また戦後の日本建築学会賞第1号となった谷口吉郎設計の「藤村記念堂」の再評価など、多彩な視点と気づきが得られる、この展覧会は23年3月19日まで。11月には中庭で「石積み学校」や「茅葺普請」のワークショップも予定されている。
 開館時間は午前11時から午後6時まで。無料。

フランス人アーチスト、ヤン・ケビ氏のドローイングを説明する塚本氏(中央)。田根氏(右)は「ディテールに注目してほしい」と語る



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