【浅草九劇】劇場、サロン、ホテルが一体に! エンタテインメントが「渦巻く」空間 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【浅草九劇】劇場、サロン、ホテルが一体に! エンタテインメントが「渦巻く」空間

正面入り口。1階にサロン(カフェ)、2-3階に劇場、3-10階にホテルが入る

 芸能プロダクションのレプロエンタテインメント(東京都品川区)が初めて手がけた劇場「浅草九劇」が、東京・浅草で3月にオープンし、そのユニークな運営コンセプトや空間、多彩な演目によって連日大勢の観客でにぎわいを見せている。場所は、浅草雷門と奥浅草の間に位置する浅草六区に近いひさご通りで、若い世代など新しい人の流れが生まれている。劇場にはホテルとサロンが併設され、コンセプトの「渦」が意図するように、ここに集う人々や周辺の人々も巻き込んで、総合エンターテインメントを創造、発信していくという。【表通りにあふれ出す劇場空間】

 劇場構想の企画段階からかかわったレプロエンタテインメントの菊地陽介氏によると、5年ほど前に土地探しから始めて、浅草の現在の場所が見つかったという。菊地氏は「浅草は、われわれの仕事であるエンターテインメントの聖地とも言える場所。微力でも恩返しができればと思っている」と話す。劇場は3月のこけら落としから好調で、下半期はほぼフル稼働の見通しだ。
 劇場が入る建物は、1階のサロン(カフェ)、2-3階の劇場(標準客席数・車いす席1席含み96席)、3-10階のホテル(30室)で構成する。劇場はレプロエンタテインメントの運営。カフェが「ザックバラン」、ホテルが「ワイアードホテル」でいずれもカフェ・カンパニー(東京都渋谷区)が運営する。
 劇場、サロン、ホテルの三者が一体となって文化交流拠点をつくろうというのが、ロゴの「渦」に込められたコンセプト。「三者三様九重の個性が四六時中描き続けるエンタテインメントの渦を、浅草から」というキャッチフレーズで、「浅草九(ここの)倶楽部プロジェクト」と名付けられた。
 ロゴの「渦」について菊地氏は、「中心の九(浅草九倶楽部)にさまざまな人を巻き込んでいく意味と、中心の九からさまざまなエンターテインメントを発信していく意味の2つが混ざり合い、渦を形成している」と説明する。
 設計・監理の大塚聡アトリエの大塚聡代表は「道路斜線のセットバックでボリュームをつくり、浅草の街のスケールに合わせた。セットバックで生まれるテラスをホテルの付加価値空間としたほか、各階の専有面積の違いを生かして、ドミトリーからハイクラスまで全室異なる客室プランを用意した」と述べる。
 その結果、多様なクラスの客室がいろいろな階に混在する格好になって、1つのホテルにさまざまな価値観を持つ人が集まることになる。浅草は海外客が特に多いので、劇場やサロンでも活発な交流が期待され、出会いや情報交換が生まれるきっかけになるのではないかと言う。

劇場内観。ライブにも対応できる 多機能さを実現

 劇場は、浅草における「文化交流施設」として位置付け、「創る人、演じる人、観る人」、宿泊者、運営者、サロンに集う地元の人々など、それぞれの距離の近さがポイントだと大塚氏は考えた。
 これを体現するため「バックステージシアター」という空間コンセプトをつくった。通常の空間配置にはこだわらず、入り口から楽屋、ホワイエ、舞台、客席の順に表と裏を組み替えている。
 大塚氏は「この構成にすることで、ホワイエが舞台の延長になったり、楽屋とホワイエをつなげて使うことなども可能となった。通常一般客が味わうことのない場所もオープンにすることで、『創る、演じる、観る』行為が表通りにあふれ出すようにした」と話す。
 ほかに防振防音構造、昇降式バトン、可変式の客席形態、スタンディングライブ仕様など、100人規模の劇場としてはハイスペックな設備を持つ。
 菊地氏は「私たちがこだわったのがいろいろな使い方、楽しみ方ができる多機能な劇場ということ。また、外観にも浅草であることの意味を持たせるために、浅草の歴史、情緒、街並みを考えて経年変化の出るれんがタイルにしたいと考えた」と語る。
 こうしたこだわりのコンセプトや空間づくり、演目の企画などが話題になり、浅草の新しいスポットとして連日のにぎわいが続いている。

■建築概要
 ▽事業主体=レプロエンタテインメント▽所在地=東京都台東区浅草2-16-2▽構造・規模=RC・S造10階建て延べ1490㎡▽カフェ、劇場(標準で96席)、ホテル(30室)で構成▽設計・監理=大塚聡アトリエ▽施工=北野建設※撮影:Nacasa&Partners

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