一方のバッファロー大学は、2年ごとに日本への建築留学プログラムを実施。今回は約100人の建築学生の中から選抜された13人がニコラス・ブルーシア准教授に率いられて来日。建築家の妹島和世氏が手掛けた「SIBAURA HOUSE」を拠点に、7週間にわたり日本各地の建築を巡る建築教育プログラムの一環としてIAUDとの日米共同のワークショップに取り組んだ。
今回、テーマとなった中銀カプセルタワーマンションは、コアシャフトに枝葉のように取り付けられた交換可能な140個のカプセル(部屋)を持つ集合住宅で1974年に竣工。メタボリズムを代表する歴史的建築として保存しようとする動きがある一方、老朽化による建て替えなども議論されてきた。
共同ワークショップではIAUDの学生10人(留学生4人含む)とバッファロー大の学生による日米混成の6チームを編成。学生たちには、(1)コアシャフトを残してカプセルを交換する(2)コアシャフトを含めた全面改築(3)メタボリズムの再定義--の3パターンが課題として与えられた。
4日間の行程のうち、初日はカプセル所有者が取り組んでいる中銀カプセルタワー保存・再生プロジェクトの見学ツアーに参加。建物内外の現状を確認するとともに、カプセル所有者に使用感や課題などをヒアリングするなどして理解を深めた。2日目と3日目は与えられたテーマに沿って学生同士でアイデアを交わしながら、構想を固めつつ、3Dモデリングソフトを使って新たなカプセルタワーの設計に取り組んだ。
4日目のプレゼンテーションには小林正美副学長や吉村靖孝特任教授、IAUD教育補助講師の中村航氏、BIMスタジオ講師の廣瀬大祐氏らがゲストとして参加する中、6グループがそれぞれのアイデアをパワーポイントや模型を使いながら披露。カプセルをつり下げることで、滑り込んだり、飛び出したりする「POP2Bridge」や、旧カプセルを1階のオープンスペースに展示する「GHOSTED」、リプレース可能なカプセルを足し引きできるようにした「OCTAGONA・PRISM」は八角形の球状カプセルで縦横に拡張できる提案などをプレゼンした。
また、メタボリズムを再定義する案の「箱舟」は、東日本大震災などの自然災害を踏まえて首都高の高架下に災害時には津波シェルターや避難所に利用できる災害対応機能を備えた引き出し型のカプセルを提示した。
参加した学生たちは、ワークショップなどを通じて友情を育むとともに、将来、国際的な場での活躍を誓い合った。世界的に活躍する日本の建築家が少ない中、完全英語教育で建築設計者を養成するこの取り組みはますます注目される。