【熱中症にご注意!】"予防"を怠りなく! 『現場環境改善費』は熱中症予防にも活用可 | 建設通信新聞Digital

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【熱中症にご注意!】“予防”を怠りなく! 『現場環境改善費』は熱中症予防にも活用可

熱中症による死傷災害は主要8業種の中で建設業が最も多い

 建設現場の「働き方改革」に注目が集まっている。最大のテーマである担い手の確保・育成に向けた休日の確保や処遇改善はもちろんだが、この季節に現場で働く人びとに注意してもらいたのが「熱中症」だ。暑さが一段と厳しさを増す時期となるだけに、リスクを早期に摘み取っておく“予防”に特に力を入れておきたい。公共工事の発注者である行政側も受注者に対する意識啓発を呼び掛けている。
 国土交通省は、発注工事を含む建設工事における労働災害(熱中症)を防止するための一助として、3月に現場での対策事例を集めた冊子『建設現場における熱中症対策事例集』を作成した。例年、ピークとなる7-8月の夏場だけでなく、5月ごろから熱中症による死傷者が発生するケースもあることから、新年度のスタート時点から早めの呼び掛けに努めてきた。
 実際に「土木工事安全施工技術指針」を8年ぶりに改定した。最新の実績データから「周辺住民の生活環境への配慮および一般住民への建設事業の広報活動、現場労働者の作業環境の改善を行うために実施する費用」として計上している『現場環境改善費』の経費率を見直す一方で、対象経費を「熱中症予防」に活用できることを改めて周知していた。
 熱中症は、高温多湿な作業環境の下で体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れるなど、調整機能が破綻することで引き起こされる障害の総称とされる。その症状は、めまいや失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛、吐き気、おう吐、倦怠感・虚脱感、意識障害、けいれん、手足の運動障害などがある。
 2016年1-12月の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(厚生労働省)によると、休業4日以上の死傷者は全産業で計462人。死亡者数は12人に上っている。業種別でみると、建設業の死傷者数は113人(死亡者数は7人)と主要8業種の中で最も多い。WBGT値(暑さ指数)を測定していないなど、基本的な対策を怠ったことが死亡者の発生につながっているという。
 『建設現場における熱中症対策事例集』は、各地方整備局などの発注工事で採用されてきた対策の中から、特に参考となる対策事例を抽出して記載している。症状や発生メカニズムといった熱中症に関する知識、認識を深める材料としても活用できる点が特徴だ。
 例えば、施工個所が点在するケースなど、近隣に冷房を備えた休憩場所などがない場合は、日陰などの涼しい休憩場所(日よけテントなど)や体を適度に冷やすことができる物品(クーラーボックスや経口保水液など)を備えることなどを推奨している。作業管理として、休憩時間の確保や作業環境に慣れていない者に対する作業時間・作業内容の配慮も盛り込んでいる。
 参考資料として、熱中症が疑われる場合の現場での応急措置(対策マニュアル)も収録している。

■熱中症が疑われた場合の現場での応急措置
(1)涼しい環境への避難
→風通しのよい日陰や、できればクーラーが効いている室内などに避難させましょう。
(2)脱衣と冷却
→衣類を脱がせて、体から熱の放散を助けます。きついベルトやネクタイ、下着はゆるめて風通しを良くします。
→露出させた皮膚に水をかけて、うちわや扇風機などであおぐことにより、体を冷やします。下着の上から水をかけても良いでしょう。
→氷のうなどがあれば、それを前頚部の両脇、脇の下、鼠径部(大腿の付根の前面、股関節部)に当てて、皮膚の直下をゆっくり流れている血液を冷やすことも有効です。
→深部体温で40℃を超えると、全身けいれん(全身をひきつける)、血液凝固障害(血液が固まらない)など危険な症状も現れます。
→体温の冷却はできるだけ早く行う必要があります。重症者を救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げることができるかにかかっています。
→救急車を要請したとしても、その到着前から冷却を開始することが求められます。
(3)水分・塩分の補給
→冷たい水を持たせて、自分で飲んでもらいます。
→大量の発汗があった場合には汗で失われた塩分も適切に補える経口補水液やスポーツドリンクなどが最適です。食塩水(水1リットルに1~2グラムの食塩)も有効です。
→応答が明瞭で、意識がはっきりしているなら、口から冷やした水分をどんどん与えてください。
→「呼び掛けや刺激に対する反応がおかしい」「応えない(意識障害がある)」時には誤って水分が気道に流れ込む可能性があります。また、「吐き気を訴える」ないし「吐く」という症状は、既に胃腸の動きが鈍っている証拠です。これらの場合には、経口で水分をいれるのは禁物で、病院での点滴が必要です。
(4)医療機関へ運ぶ
→自力で水分の摂取ができないときは、点滴で補う必要があるので、緊急で医療機関に搬送することが最優先の対処方法です。
→実際に救急搬送される熱中症の半数程度がIII度ないしII度で、医療機関での輸液(静脈注射による水分の投与)や厳重な管理(血圧や尿量のモニタリングなど)、肝障害や腎障害の検索が必要となってきます。

■情報入手で対策/7-9月は全国的に高温
 熱中症が発生しやすい6-9月は、積極的に気象情報を入手して、対策をとっていくことが必要となる。
 環境省は、WBGTの情報提供として、全国840地点のWBGT予測値を「熱中症予防情報サイト」で当日、翌日、翌々日の3日分にわたって、3時間ごとに公開している。
 気象庁が6月23日に発表した、7-9月の天候見通しによると、3カ月の気温は全国的に高くなる見込み。より積極的に関連する情報提供サイトをチェックして早めに情報を入手するなど、対策の基礎となる取り組みの推進が求められる。

■WBGT値とは
 WBGT値とは、人間の熱バランスに影響が大きい「気温」「湿度」「輻射熱」の3つを取り入れた温度の指標のことを言う。熱中症に対する危険度を判断する数値として2006年から情報提供している。
 作業場所における暑さ指数(WBGT値)が、基準値を超える恐れがある場合、熱中症にかかる可能性が高くなる。環境省の熱中症予防情報サイトによると、WBGT値(基準値)が、21度未満は「ほぼ安全」、21-25度は「注意(積極的に水分補給)」、25-28度は「警戒(積極的に休憩)」、28-31度は「厳重警戒(激しい運動は中止)」、31度以上は「運動は原則禁止」としている。

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