【クローズアップ】「アートのチカラ」で地元商店街に活気/ウチノ板金 | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【クローズアップ】「アートのチカラ」で地元商店街に活気/ウチノ板金

海外を中心に人気がある「板金の折鶴」

【板金の技術 海外で高い評価/内野友和社長】
 日本の職人による精度の高い“板金”の技術が、ドイツやフランスなど海外を中心に注目を集めている。金属を加工し屋根や外壁などをつくるこの技術に、日本人の繊細な美意識が加わることで、特徴的なアート作品「板金の折鶴」が誕生した。新たな工芸品ブランドとしての価値が生まれている。

 建築板金を手掛けるウチノ板金(東京都東村山市)の内野友和社長は、そんな板金の技術に魅了された国内外のファンのために、2023年秋に地元の東村山市青葉町にある青葉商店街に「和國商店(わくにしょうてん)」をオープンする。この新たな拠点では、板金の折鶴や壁掛けオブジェの制作、各種作品の販売を行うほか、交流の場としてカフェを設けることも視野に入れている。

和國商店の完成イメージ
ⓒ隈研吾建築都市設計事務所

【デザイン監修=隈研吾事務所 設計施工=岡庭建設 今秋、東村山市に新拠点】
 施設は、もともと商店だった既存施設を活用し、リノベーションする。岡庭建設(西東京市)の設計施工で5月にも着工するこのプロジェクトは、隈研吾建築都市設計事務所がデザイン監修する。

 内野社長は「幼い頃から通い慣れた地元の青葉商店街に新しい拠点を開発し、もう一度、にぎわいを取り戻したい。世界的な建築家である隈さんの協力を得ることができ、身の引き締まる思いだ。業界で活躍する職人の力を国内外に広めたい」と語る。

 ウチノ板金は、内野社長の父・國春氏が1990年に創業した。以降、建物の外装工事を中心に事業を展開している。2014年に事業を引き継ぐとともに法人化した。

 現在の主な事業内容は、内外装工事業と工芸品製作販売となる。従業員数は11人。資格を持った技能士・診断士が在籍し、若手が活躍する同社では、企業理念「職人が生き、職人が活き、社会から必要とされ、羨望(せんぼう)される会社をつくる」を大切にしている。

 屋根や雨どい、雪止め工事などを得意とする同社の職人の手仕事は評価が高く、雨じまいなど施工後のサポートにも責任を持って対応している。顧客から信頼を獲得し、地域に不可欠な企業として認知されている。

ウチノ板金の板金鋏


 内野社長は「日本の板金技術は世界的にも高い水準にある。業界内での意見交換・交流も盛んだ。隈さんは、同業の植田板金店(岡山市)の社長から紹介していただいた」という。

 内野社長自身、幼少期から商店街にある学習塾や駄菓子屋などの個人商店に通い、人々の支え合いや温かさなどに触れて育った。そんな地元の商店街に活気が失われていく中で、和國商店の開発プロジェクトのテーマ「循環」が生まれた。

 内野社長は「アフターコロナを迎えるいま、個人商店が主役になれる時代が到来する。人々が集う拠点“和國商店”をつくることで、新たな可能性と価値を創造できると信じている。隈さんにも板金の技術に興味を持っていただいている。地元を元気にしたいという私の思いにも理解を示してくれた。それだけに、このプロジェクトへの期待も大きいと感じている。設計施工の岡庭建設をはじめ、地域の皆さんと一緒になって、より良い施設を完成させたい」と意気込みを語る。

 和國商店は青葉商店街の中央(青葉町2丁目)に配置する。これにより、商店街の北と南にも拠点の効果を波及させ、地域を盛り上げる狙いがある。

 内野社長は「開業後の取り組みにも期待してほしい。建築を楽しむ、板金の折鶴の制作を楽しむなど、さまざまな仕掛けを用意している。ここでコーヒーを一杯飲むだけでも、十分に満足してもらえると思う。気軽に足を運んでいただきたい」と笑みをこぼす。

内野友和(うちのともかず)社長。1998年に高校卒後、ウチノ板金に入社し、さまざまな現場で研さんを積む。2014年4月の社長就任後、工芸品製作販売などの新たな事業にも挑戦している。43歳。

 

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