過去から学び将来に備える 国土強靱化は国家100年の大計
近年の自然災害の激甚・頻発化に伴い、内閣府防災担当でもそれらに備える取り組みが加速している。切迫する巨大地震については、特に広範囲で大規模な被害が想定される南海トラフ地震に関して、減災目標などを定める防災対策推進基本計画が策定から間もなく10年を迎えるため、その見直しに向けて、被害想定手法などの検討会を2月に設置した。2024年春の取りまとめへ議論が進んでいる。
避難対策も最重要施策の一つ。「さまざまな災害への対応で共通するのは避難をきちんとすること。そのためには『自分の命を自分で守る』という意識を一人ひとりがしっかり持つことが必要になる」と話す。発災後の初動対応の指揮を執る各市町村長が避難指示を素早く的確に出せるよう動画作成などに取り組んでいる。加えて、防災分野へのデジタル活用の一環として、災害対応機関の情報共有を強化する「防災デジタルプラットフォーム」の構築にも注力している。
災害に強い国土づくりに向けては「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が着実に進展している。3年目までに事業規模9.6兆円を確保し順調との認識を示す。「国土強靱化は国家100年の大計。加速化対策後も中長期的かつ明確な見通しの下で継続的・安定的に取り組みを進めることが重要だ」と力を込める。
国土強靱化を巡っては、国土強靱化基本法の改正やポスト5か年対策などを検討する与党のプロジェクトチームが発足したことを踏まえ、「与党の動きとも連携しながら取り組んでいきたい」考えだ。国土強靱化に関する国の計画の指針となる新たな国土強靱化基本計画も、今夏の閣議決定に向けて詰めの議論が進んでいる。
22年8月の就任以降、豪雨や台風の被災地を視察した。そこで異口同音に加速化対策の継続を求める声を聞いたという。「地方の熱い思いをしっかりと受け止めて頑張っていきたい」と意気込む。
迅速な災害対応に向けては、「地域の建設業者の存在が不可欠だ」と強調する。各社が適切な設備投資や人材確保に努め、災害から地域を守る体制を維持し続けるためにも「国が強靱化や防災対策、インフラの充実に努めていくというメッセージを出すことが重要だ」と説く。
兵庫県職員時代に95年1月の阪神・淡路大震災を経験した。「当時は兵庫県庁も24時間の防災体制を取っていなかった。備えなしにはいざという時に対応できないことを痛切に感じた」と振り返り、過去の災害からいかに学ぶかを教訓に挙げる。「今後の災害の被害を想定し、早期に対策を講じることが非常に重要だ」と実感を込める。