【レジリエンス社会へ】防災担当大臣 谷 公一氏 | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

レジリエンス社会へ

【レジリエンス社会へ】防災担当大臣 谷 公一氏

過去から学び将来に備える 国土強靱化は国家100年の大計

 1923年9月1日、相模湾北西部を震源とする推定マグニチュード7・9の関東大震災が発生した。被災家屋約37万棟、死者・行方不明者約10万5000人。首都圏を襲った巨大地震は、わが国の自然災害史上最悪となる未曽有の被害をもたらした。発災から間もなく100年。この間にも幾多の自然災害が発生し、そのたびに復興を成し遂げ、多くの教訓を得てきた。一方、迫りくる巨大地震や気候変動に伴う豪雨など依然として大きな災害リスクに直面している。次の100年に向け、これまでの教訓や知見を生かし、いかに「レジリエンス社会」を築き上げるか。谷公一防災担当相に国の防災施策や国土強靱化の取り組みの現状を聞いた。

防災担当大臣 谷 公一氏

 「明治以降の災害史でも特筆すべき災害であったことは間違いない」。関東大震災についてこう語り、発災した9月1日が「防災の日」に定められていることからも近代日本の防災・減災対策の出発点と捉える。「大規模な災害リスクに直面するわれわれにとって、過去から学ぶことは参考となる示唆や教訓を与えてくれる」とし、9月に神奈川県で開く防災推進国民大会などを通して防災意識のさらなる啓発に努める考えを示す。

 近年の自然災害の激甚・頻発化に伴い、内閣府防災担当でもそれらに備える取り組みが加速している。切迫する巨大地震については、特に広範囲で大規模な被害が想定される南海トラフ地震に関して、減災目標などを定める防災対策推進基本計画が策定から間もなく10年を迎えるため、その見直しに向けて、被害想定手法などの検討会を2月に設置した。2024年春の取りまとめへ議論が進んでいる。

 避難対策も最重要施策の一つ。「さまざまな災害への対応で共通するのは避難をきちんとすること。そのためには『自分の命を自分で守る』という意識を一人ひとりがしっかり持つことが必要になる」と話す。発災後の初動対応の指揮を執る各市町村長が避難指示を素早く的確に出せるよう動画作成などに取り組んでいる。加えて、防災分野へのデジタル活用の一環として、災害対応機関の情報共有を強化する「防災デジタルプラットフォーム」の構築にも注力している。

 災害に強い国土づくりに向けては「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が着実に進展している。3年目までに事業規模9.6兆円を確保し順調との認識を示す。「国土強靱化は国家100年の大計。加速化対策後も中長期的かつ明確な見通しの下で継続的・安定的に取り組みを進めることが重要だ」と力を込める。

 国土強靱化を巡っては、国土強靱化基本法の改正やポスト5か年対策などを検討する与党のプロジェクトチームが発足したことを踏まえ、「与党の動きとも連携しながら取り組んでいきたい」考えだ。国土強靱化に関する国の計画の指針となる新たな国土強靱化基本計画も、今夏の閣議決定に向けて詰めの議論が進んでいる。

 22年8月の就任以降、豪雨や台風の被災地を視察した。そこで異口同音に加速化対策の継続を求める声を聞いたという。「地方の熱い思いをしっかりと受け止めて頑張っていきたい」と意気込む。

 迅速な災害対応に向けては、「地域の建設業者の存在が不可欠だ」と強調する。各社が適切な設備投資や人材確保に努め、災害から地域を守る体制を維持し続けるためにも「国が強靱化や防災対策、インフラの充実に努めていくというメッセージを出すことが重要だ」と説く。

 兵庫県職員時代に95年1月の阪神・淡路大震災を経験した。「当時は兵庫県庁も24時間の防災体制を取っていなかった。備えなしにはいざという時に対応できないことを痛切に感じた」と振り返り、過去の災害からいかに学ぶかを教訓に挙げる。「今後の災害の被害を想定し、早期に対策を講じることが非常に重要だ」と実感を込める。



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