"可動産"のインフラ目指す/コスモスモアのワーケーション車 | 建設通信新聞Digital

5月19日 日曜日

公式ブログ

”可動産”のインフラ目指す/コスモスモアのワーケーション車

ワーケーション向けに作業中の眺望を確保


 
 コロナ禍以前から建設業の小規模現場など向けに、事務所機能を持つ車両を提供するサービスが展開されているが、ワーケーションや防災などを見据えて提案する動きも出てきている。大和ハウス工業グループのコスモスモアは、ワーケーション向け車両をカーシェアリングで提供するサービス「mobica」(モビカ)を今夏から秋にかけて開始する。オフィス空間の企画・設計のノウハウを自動車の架装に応用して執務向きの車内空間を提供し、「ワーケーションを支えるインフラのような立ち位置」(中村正典mobica推進室室長)を目指す。将来的に「電気自動車や自動運転が普及すると、充電で停車中の自動車を有効活用したいなどの需要が増える」と展望し、車両として移動できる執務空間を「可動産」と位置付けて提案を広げる。
 

中村室長

◇「可動産」としての執務空間
 モビカはワーケーション需要の高まりを見据えて構想。事業化のきっかけは、新規事業創出を目指して全従業員から案を募集したコンテストだった。2021年夏にモビカの素案が選定を受け、事業性や具体的な空間設計の準備を進めた。選定のポイントは「働く場の可能性を不動産から車内に広げた点」という。それをコンセプトに継承し、働くスペース・働き方をより自由にする選択肢として展開する。
 車種は1、2人向けのN-VAN(ホンダ)と2、3人向けのハイエース・ナローボディーハイルーフ(トヨタ自動車)から導入(ハイエースは今秋に提供開始予定)。利用は最短24時間、料金1万5000円からに設定。パソコンでの作業に特化した仕様に架装し、ポータブル電源やソーラー発電システム、Wi-Fi、アーム式パソコンモニターなどを備える。

パソコンでの作業と、寝転がりながら休憩を同じ車内でできるよう設計


◇自由な働き方需要に訴求
 まず主な利用者は、自由な働き方に関心が高いフリーランス層への訴求を狙う。5月には川崎市のソーシャルアパートメント「ネイバーズ読売ランド」駐車場にステーションを開設。そのほか東京・吉祥寺に拠点を設け、都市部からの展開拡大を目指す。将来的には法人向けの福利厚生や、自治体向けのワーケーション推進手段としての導入も視野に入れる。
 モビカの使い方は、都市部の利用者が海、山、湖付近などに駐車して自然から刺激を受けて作業する利用シーンなどを例示する。「少人数で共に仕事をしつつ、観光したり、お土産を買って帰ったりといった使い方でチームビルドに役立つ」と見通すほか、「平常時は執務空間として活用しつつ、コロナ禍の緊急事態宣言時や災害時などに臨時の個室が必要という場面での活用も期待する」と語る。
 
 
 

使用イメージ


◇運転性、快適性の両立にこだわる
 車両の中に執務空間を実現する過程で、ジレンマを乗り越える必要があった。ノートパソコンを広げて作業しやすい机とイスの寸法を単純に確保すると、車体の天井と利用者の頭が近く圧迫感を与えてしまう。一方、執務空間にゆとりを持たせるためにサイズの大きい車種を採用すると、小柄な人や運転に不慣れな人などが運転しづらい。

 モビカの発案と車内空間設計に参画した堤博章ストラテジックデザイン部ストラテジックデザイン1課課長は「さまざまな車種に架装するうちに、同じ寸法でも執務空間としての快適性に差が出てくると気付いた」と語る。試作、試乗を繰り返して車種を2種に絞り込んだ。
 
 
 
 

堤課長


 空間設計でこだわったもう一つのポイントは、執務中の眺望だった。「試乗中、山梨県の西湖のほとりで湖面のゆらぎや水のせせらぎとともに仕事をする体験ができた。これをぜひ堪能してもらいたい」と、車両の後部ドアを開けてその場所の景色を見ながら作業ができる仕様とした。さらに働き方の自由度を広げるため、立位や足を伸ばして座った姿勢での作業、シートを倒しての車中泊も可能とした。

 

【公式ブログ】ほかの記事はこちらから

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら