【BIM/CIM未来図DX】NiX JAPAN(2) | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

B・C・I 未来図

【BIM/CIM未来図DX】NiX JAPAN(2)

施工課題の見える化で設計最適化/時短、手戻り解消も大きな成果

 NiX JAPAN(富山市、旧新日本コンサルタント)のBIM/CIMをけん引している東京本社構造部の構造橋梁グループは、メンバー11人全員がオートデスクの汎用(はんよう)CAD『AutoCAD』の3次元機能を使いこなす。2020年度から一般図を3次元で描くことをグループ内で決めた。丸山貴弘担当課長は「3次元モデルを使い、施工時の課題や問題点を明らかにし、設計の最適化を突き詰めている」と説明する。

 水資源機構発注の管理橋耐震補強実施設計では、資材搬入の位置取りまでこまかく検証した。4次元シミュレーションを使って施工ステップも再現し、発注者側とは施工時の課題を共有し、それを設計に反映した。「発注者側から現況の点群データを提供されたことも下支えになった」と振り返る。

 東京都水道局発注の水管橋耐震補強設計では、橋梁の一部がフェンスで囲われており、既設の構造を細かく把握する上で全体を3次元モデル化し、最適な補強方法を検証した。周囲の既設構造物との取り合いも把握でき、施工時の課題だけでなく、補強後の状況も事前に見える化した。

 両業務はともに業務成績78点を獲得し、発注者から優秀表彰を受けた。構造技術本部長の戸田一夫取締役執行役員は「いずれの業務も、発注者とのコミュニーションツールとしてBIM/CIMを活用している。従来の2次元では設計を進めながら細かく状況を報告できないだけに、密に情報共有を進めたことが高評価につながった」と考えている。

施工ステップで補強方法を検証

 埼玉県から受託した現在進行中の橋梁耐震補強基本設計では、長さ800mに渡る道路橋全体をBIM/CIMモデルで見える化している。構造部分も細部までモデル化し、重点的に補強すべき箇所の把握とともに、資機材の搬入経路も検証中だ。丸山氏は「細かい部分まで再現することで、事前に施工時の課題検証が可能になり、発注者と密な打ち合わせができている」と説明する。

複雑な既設構造を3次元で把握

 このように同社は、受託した業務の内容から、設計者として取り組むべき役割を見定め、それを実現する手段としてBIM/CIMを活用している。単に設計図面を仕上げるのではなく、施工段階を見据え、どのように設計することが最善であるかを考えている。BIM/CIM推進室長の升方祐輔空間情報部部長は「そうした技術者一人ひとりの前向きな業務への取り組み姿勢が、業務成績の向上につながっている」と分析している。

 構造橋梁グループでは、21年度に埼玉県発注の橋梁補耐震補強設計で、その年の業務最高得点となる90点を獲得するなど、BIM/CIM活用の成果として業務成績の向上が鮮明になっている。ただ、これまでBIM/CIM活用の発注者指定業務はなく、あくまでも自らの業務最適化ツールとしてBIM/CIMを活用し、自主的に取り組んできた。

 戸田氏は「BIM/CIMの活用による成果として業務成績の向上効果が見られるものの、実は発注者との協議時間短縮や、設計変更の手戻りが大幅に減るなど、目には見えない部分での効果がとても大きな成果」と分析している。同社ではBIM/CIM導入にかじを切ったことをきっかけに、業務に対する意識変化が広がり始めている。現在、構造橋梁グループが手掛けている国土交通省の直轄業務では、将来を見据えた新たな試みにもチャレンジしている。

橋全体の状況を3次元で見える化



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