【BIM/CIM未来図DX】NiX JAPAN(3) | 建設通信新聞Digital

5月12日 日曜日

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【BIM/CIM未来図DX】NiX JAPAN(3)

3次元で業務に新たな視点/維持管理向けデータベース構築に挑む

 NiX JAPAN(富山市、旧新日本コンサルタント)は、国土交通省の橋梁点検業務で、維持管理段階のBIM/CIMデータ活用に取り組んでいる。東京本社構造橋梁グループの雷暁宇係長は「3次元モデルの中に点検情報を集約した維持管理データベースの構築にもチャレンジしている」と明かす。

維持管理3次元モデル


 点検対象の橋梁を3次元モデル化し、そこに近接目視の調査で把握した点検結果の情報をひも付けていくもので、小さな損傷も含め、その全てをモデルに反映することにより、補修時に的確な位置を把握でき、補修後の工事情報を反映すれば、その後の履歴管理が可能だ。「このモデルを発展させ、新たな維持管理ツールとして確立したい」と力を込める。

 2023年度からBIM/CIM原則化がスタートした。国土交通省では調査から設計、施工、維持管理に至るまで一貫してBIM/CIMデータが円滑につながる姿を目指している。インフラ分野のDX推進にも本格的に乗り出したことから、土木構造物をどう有効に使っていくか、完成後に構造物を利活用するインフラサービスの視点でも新たな仕掛けづくりが求められている。管理面では国土強靱化方針を背景に、インフラ構造物の定期点検が義務化され、業務の効率化が求められるだけに、点検のデジタル化は有効な手段になり得る。

 同社では、橋梁点検の結果を3次元モデルの属性情報としてひも付けていく過程で、いくつかの課題にも直面している。業務ではオートデスクの汎用(はんよう)CAD『AutoCAD』と土木設計ツール『Cvil 3D』を使い、維持管理3次元モデルに点検結果を属性として付与している。構造モデルの上に情報をひも付けているが、橋梁の損傷は外面の塗装部分と内側の構造部分で異なる。それをどう分かりやすく示せるか。ひび割れが生じている部分も構造物内部で広がっているケースもある。維持管理情報の効果的な表現方法も新たなテーマとして検討を進めている。

既設構造との取り合いを見える化


 丸山貴弘担当課長は「維持管理段階で必要な情報を見極めなければ、せっかく構築した維持管理モデルが使えないものになってしまう。今後の定期点検や維持補修にも使っていける最適な枠組みを構築していきたい」と語る。業務では気になる損傷について、3次元モデルに現況画像を付与する工夫も進めており、発注者との協議ではモデルをベースに今後の補修方法についての協議が円滑に進み始めたという。

モデルに損傷画像を付加


 このように同社では、技術者が最適なBIM/CIMの活用方法とは何かを常に見据えながら取り組む姿が現れ始めた。BIM/CIM推進室長の升方祐輔空間情報部部長は「次工程のことを踏まえ、最適解を出していくことがわれわれのBIM/CIMの使い方」と説明する。社内をけん引する構造橋梁グループでは、先行するようにBIM/CIMデータを「使う」意識が定着し、重点テーマとなる「BIM/CIMの自分事化」が着実に広がり始めている。

 構造技術本部長の戸田一夫取締役執行役員は「技術者がBIM/CIM活用を実践することで、業務上で気付かなかったものが見えるようになり、それが業務の新たな視点につながっている」と手応えを感じている。21年度から取り組む人材育成は着実に進展しており、3次元設計の取り組みが全社に定着すれば「BIM/CIM活用の新たなステージに入れる」と確信している。



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