【BIM/CIM原則化元年④】JR東日本 建設部門におけるBIM/CIMの取り組み 東京建設プロジェクトマネジメントオフィス企画戦略ユニットマネージャー 井口重信氏 | 建設通信新聞Digital

5月9日 木曜日

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【BIM/CIM原則化元年④】JR東日本 建設部門におけるBIM/CIMの取り組み 東京建設プロジェクトマネジメントオフィス企画戦略ユニットマネージャー 井口重信氏

誰もが簡単に3次元データ活用

 JR東日本建設部門は、調査・計画、設計、発注、施工、維持管理のサイクルを通じてBIMを活用する「JRE-BIM」を進めています。これまでにCDE(共通データ環境)の構築、ガイドライン作成、電子納品・電子契約の本格導入、設計段階のBIM作成・点群取得原則化などの施策を展開してきました。

井口重信氏

 一方、BIMモデルは詳細にするほど作成費が上がるため、有効活用が重要です。従来は契約図書の二次元図面の参考資料としてBIMを扱ってきましたが、現在はBIMモデルから切り出した二次元図面を契約図書とする試行を進めています。

 BIMを普及させるには、誰もが自分のパソコンで簡単に使える環境や、インフラの寿命に合わせたデータの長期保存、機能追加への柔軟な対応が不可欠です。そのため、子会社の「CalTa」を設立し、BIMや点群をウェブブラウザで簡単に扱えるデジタルツインソフト『TRANCITY(トランシティ)』を開発しました。クラウドに動画をアップロードすれば自動で点群モデルを生成するほか、BIMの3次元モデルもアップロードできます。普通のパソコンがあればいつでもどこでもアクセスでき、点群モデルから図面を起こしたり、寸法を確認できるため、BIM活用の敷居を下げることができました。

 このTRANCITYに格納した点群モデルの計測結果を活用し、社内関係者や施工者などとデータ共有して駅施設の完成検査を遠隔化する試行に取り組んでいます。点群モデルに工事写真の画像と撮影位置を紐付けて工事履歴を残す取り組みも始めました。台帳管理を不要にすることで検測記録の簡略化と工事終了後のデータ確認を容易にします。

 遠隔管理の究極の姿として、自動航行ドローンを活用して遠隔監理する実証実験を当社の水力発電設備更新工事も行いました。1日2回ドローンが現場を自動巡回し、5Gを通じて映像をクラウドに送信し、自動で点群化することで職員はタブレット端末から工事の状況を確認できます。点群を活用して配筋検査を自動化する検証も進めています。

 一方、フェーズ間のデータ連携では、施工への引き継ぎに課題があります。そのため、3Dプリンターを使ってBIMモデルから直接構造物をプリントし、施工する研究を土木学会などと連携して進めています。今年6月までに2年の研究を行い、JR内房線太海駅に3次元プリンターで作成したベンチを設置しました。実構造物への適用をステップアップしていく予定です。

 今後も施策を展開する上でBIMモデルの作成費と効果のバランスが重要です。事前に利用目的と期待する効果を検証し、効果に見合った詳細度を設定してモデル化するようにしています。また、BIMの推進には、各フェーズで「人(スキル)」「モノ(環境)」「ルール」のどれか一つでも劣っていると進まないので、これら三つをバランス良く伸ばすことを意識して進めています。BIMの目的はデータの高度化ではなく生産性向上です。無駄な業務を減らすことを意識しなければなりません。今後も関係者と連携し、チャレンジしていきたいと思います。

太海駅のベンチを3Dプリンターで作成



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