【記者座談会】一人親方で初の実態調査/建設コンサルの経営状況 | 建設通信新聞Digital

5月14日 火曜日

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【記者座談会】一人親方で初の実態調査/建設コンサルの経営状況

◇自らの働き方確認へ直接聞き取り

A 国土交通省が、建設業者による一人親方の社会保険加入規制逃れ対策で初めて一人親方個人に対する実態調査に乗り出した。

B 調査では、一人親方と労働者のどちらの働き方に該当しているかを確認できる「働き方自己診断チェックリスト」の活用状況を把握する。2022年度の事業者への調査では、7割近くがチェックリストの存在すら「知らない」という回答だった。

C チェックリストは作成しなくても罰則がなく、軽んじられがちかもしれないが、働き方を客観的に判断できる重要なものだ。自分の人生を守るためにも活用が望ましい。

B これまでは直接的なアプローチ方法がなかったこともあり、事業者にヒアリングするしかなかった。今回は、日本建設業連合会、全国建設業協会、全国建設労働組合総連などの建設キャリアアップシステム(CCUS)処遇改善推進協議会の構成団体経由でウェブアンケートを実施するほか、CCUSに技能者登録済みの一人親方へ直接メールで回答協力を求める。

C 技能者自身が一人親方という認識がない問題を浮き彫りにするための調査かもしれないけど、ウェブアンケートだけにどれだけ回答が集まるのか読めない。実態に迫るのは難しいかもしれないね。

A 一人親方は知識と経験が豊富で貴重な存在だ。インボイス制度も始まり、業務の負担にならないと良いけど。

B 実態調査の結果を踏まえて国交省は、年明けにはもう一歩踏み込んだ活用促進策をまとめる。「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」では、26年度以降に「適正でない一人親方」の目安策定を明記している。

C 一人親方の全体数は、誰も把握できていないのが現状だ。少しでも処遇改善につながるよう期待したい。

一人親方の適正な働き方を促進することは建設現場の就労環境改善のみならず将来の担い手確保にもつながる。(写真は本文と関係ありません)

◇22年は増収減益 さらなる改善を

A ところで建設コンサルタンツ協会加盟会社の経営分析説明会が開かれたけど今年の特徴は。

D 22年調査は会員501社のうち438社が調査票を提出した。回答率87.4%となる。全社平均を見ると総売上高は33億9700万円で前年比2.4%増となったが、営業利益は2億9843万2000円で1.7%減と増収減益だった。営業利益率も前年の9.2%から8.8%と0.4ポイント低下している。

E 説明会では各経営指標について00年以降の推移を紹介した。その多くが09年から11年にかけて深い谷間となって数値が落ち込んでいる。特に営業利益率を見ると09年は2.0%まで下がっている。よく失われた20年、または30年とも言われるが、00年から11年までの12年間の営業利益率は平均値で3.0%にとどまる。「官から民」の構造改革路線から民主党政権の「コンクリートから人へ」に至る時期を振り返って「塗炭(とたん)の苦しみを経験した」と語った経営トップもいたが決して誇張ではない。

D 各指標とも11年3月の東日本大震災と12年暮れの政権交代を経た13年を境に一気に好転する。営業利益率も13年から22年までの10年間では平均値が6.7%となる。

E いまの水準が高いわけではない。見方を変えればやっと20年前、25年前の状態に戻ったとも言える。一方で災害が激甚化・頻発化し、インフラ老朽化も進展する中、働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性向上も求められる。多様化・複雑化する社会課題に応えていくためにも、良質な社会資本整備のための設計ストックの安定的確保や技術者単価の引き上げはこれからも必要だ。

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