【施工BIMのインパクト2023①】施工BIMの最新動向2023 "終わらせ方"が新たなテーマに | 建設通信新聞Digital

5月14日 火曜日

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【施工BIMのインパクト2023①】施工BIMの最新動向2023 “終わらせ方”が新たなテーマに

 日刊建設通信新聞社は12月5日、ウェブセミナー「施工BIMのインパクト2023-現場デジタル化の道筋-」を開催した。ゼネコンによる施工段階のBIM活用が着実に進展する中、最前線の現場では協力会社とのデータ連携効果が目立ち始めている。セミナーでは、日本建設業連合会建築生産委員会BIM部会部会長の曽根巨充氏と国土交通省官庁営繕部整備課施設評価室長の滝本悦郎氏が基調講演したほか、最前線のプロジェクト事例として、安藤ハザマとSUGIKOのデータ連携、東亜建設工業と野原グループの活用、高砂熱学工業、弘電社、新菱冷熱工業、ダイダンから設備BIM研究連絡会や現場連携の取り組み、東芝エレベータの設計デジタル化を紹介し、建設現場のデジタル化の進むべき方向性とBIMからDX(デジタルトランスフォーメーション)につながる道筋を提示した。セミナーは約1500人が聴講した。日建連が後援し、オートデスクと大塚商会が協賛した。本セミナーの内容は、12月28日までオンデマンド配信する。
日本建設業連合会 建築生産委員会BIM部会部会長 曽根巨充氏


 国土交通省の建築BIM推進会議や日本建設業連合会などがBIMガイドラインを作成し、設計と施工のデータ連携を効率化する取り組みが加速しています。一方で、ギャップはまだ大きい状況です。例えば施工者の知見を設計段階にフロントローディングすることが期待されますが、設計者には自分たちの仕事が増えるネガティブなイメージを持つ人も多いようです。設計と施工の業務実態を知り、互いの課題や用語の定義などを「目線合わせ」する新たな視点が必要です。

 そこで、設計-施工-維持管理の“舞台(段階)”をつなぐ縦軸の議論に、設計、施工、専門工事会社など“アクター(役者)”による横軸の観点を加え、縦横軸でデータの受け渡しの役割を整理し直すことがポイントになります。

 施工部門が必要なBIMデータは、「意匠、構造、設備の空間調整が済んでいる」「設計図書(図面)とBIMデータの整合」「確定事項と未確定事項(懸案事項)が可視化」「信用できるデータの提示(部分でも可)」の四つです。たとえ設計者と施工者が同じ言葉を使っていても納まりや干渉などの詳細度に大きなギャップがあります。こうした溝を埋めるために施工BIMを始めるキックオフミーティングの時に、意匠、構造、設備の設計者がBIMを通じて設計意図を伝達し、関係者と共有する事例が日建連に報告されています。互いに尊重し、課題解決に向けて共創することが重要です。

 一方、これまでのBIM標準化の議論はデータの受け渡しが主なテーマでしたが、これからは竣工BIMなどによるデータの「終わらせ方」も重要になります。具体的には発注者のEIR(発注者情報要件)に合わせて三つのデータ納品のパターンが考えられます。

 1番目は発注者が設計や施工でBIMの利用を義務付けてもBIMの納品を契約に含まないパターン。2番目は発注者がデータ納品を求める場合で、EIRで納品の条件を提示します。3番目は設計・施工だけでなく維持管理・運用段階で使用する情報を付加してBIMデータを要求する場合です。発注者は工事後にBIMをどう活用するかを明示することが大切になります。

 納品データの種類は、従来の完成図(竣工図)に該当する竣工BIM、施工図や製作図に使用した完成施工BIM(建築)、同(設備)、維持管理・運用を目的にモデリングし直した維持管理・運用BIM、施設更新や管理に合わせてモデルを更新する維持管理・運用BIMの五つに分類できます。

 BIMはあくまで手段であり、ただ使うだけでは大きな共感が生まれない時代になりました。その中で推進を図るには、新しい時代の建築生産の目標を示し、これまでの面倒なことをしたくない層やモデルは作成するが目的を説明できない層の“やる気スイッチ”を押すことで、建築生産プロセスをより良い方向に導く層にシフトすることが期待されます。

 今後はBIMの縦横軸の議論の中で、横軸となる発注者、設計者、施工者、専門工事会社などのワークフローを縦につないでいく新たなワークフローを定義したいと思います。関係者による正しいデータ連携がますます重要になります。


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◆28日までオンデマンド配信中
当社ホームページで11日から28日午後1時までセミナーのオンデマンドを配信します。視聴は無料ですが、事前登録が必要です。HPから登録ください。既にセミナーに登録した方はオンデマンド配信と同時に視聴URLをご連絡するため、再登録の必要はありません。







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