【TOKYO-変貌し続ける都市④】新宿駅周辺エリア 駅周辺の再編で回遊性向上へ | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

公式ブログ

【TOKYO-変貌し続ける都市④】新宿駅周辺エリア 駅周辺の再編で回遊性向上へ

 世界一の乗降客数を誇る新宿駅。JRや京王線、小田急線、都営地下鉄、東京メトロが乗り入れるなど圧倒的な交通利便性を誇る。新宿駅周辺の街並みは東側が複合商業施設や飲食店などが集積し、西側は東京都庁など超高層ビルが立ち並び、対照的な光景が広がる。そうした駅周辺は、建物の更新期を契機に駅や駅前広場、駅ビルを一体的に再編し、駅とまち、まちとまちをつなげ、新宿全体を活性化させる「新宿グランドターミナル」整備方針が2018年に策定された。事業が進む新宿駅直近地区土地区画整理と、計画が進む新宿駅西口地区と新宿駅西南口地区の駅西口エリアでは40年代の全体完成を目標に、歩行者の回遊性を高めた人中心のまちづくりが進行中だ。新宿は「より魅力的な世界の新宿」を目指して生まれ変わる。

新宿西口駅前は着々と開発が進む

 新宿駅前は1960年代から駅施設の大規模改良に合わせて発展して以来、おおむね姿を崩さずに半世紀以上にわたって、まちの玄関口としての役割を果たしてきた。時代の流れとともに駅周辺には老朽化した建物が目立ち始めたこともあり、東京都と新宿区は街の再編に乗り出した。

 超高層オフィス街の玄関口となる新宿駅西口では、駅前広場と建物が一体となった「立体都市広場」をテーマに置く。「新宿駅西口地区開発計画」(延床面積約28万1700㎡)では、小田急電鉄や東京地下鉄、東急不動産(予定)が小田急百貨店新宿店本館跡地に地下5階地上48階、高さ約260mの超高層ビルを建設する。モダニズム建築で知られる建築家の坂倉準三が手掛けた同百貨店のファサードも解体が進む。29年秋にはハイグレードなオフィス機能と新たな顧客体験を提供する商業機能を備えた複合商業施設が誕生する。


新宿駅西口地区開発計画の完成イメージ

■京王電鉄らが高層ビル
 小田急百貨店と隣接する京王百貨店新宿店も例外ではない。同百貨店・JR東日本グループのルミネ新宿1が立地する北街区と甲州街道を挟んで新宿サザンテラスに隣接する南街区で構成する「新宿駅西南口地区開発計画」(同約29万1500㎡)では、京王電鉄とJR東日本が高層ビルの開発を手掛ける。23年4月から解体工事が始まった南街区は地下6階地上37階、高さ約225mとなり、店舗や事務所、宿泊施設が入る予定だ。28年度の竣工を想定し、地下3階地上19階の北街区を含めて40年代の完成を目指している。

 立体都市広場は、老朽化に伴う建て替えとともに実現する。西口地区と西南口地区の北街区を往来できるテラスを低・中層階に設置するほか、南北400mにわたる開放感あふれる滞留・回遊空間「スカイコリドー」も整備する。西南地区北街区と南街区をつなぐ歩行者デッキの整備も計画中だ。こうした歩行者回廊は、新宿のまちを眺望できる広場空間を生み出すともに、歩行者の駅とまちとの回遊性を高める。

新宿駅西南口地区開発計画の完成イメージ

 22年から始動中の「新宿駅直近地区土地区画整理事業」により西口駅前広場は、車中心から人中心の広場に大きく変貌を遂げる。同広場は地下1階中央上部を大きく開口させ、地下に自然光線を取り入れるといった地上地下一体型の特徴を持つ。46年度の完了を目指す同整備事業は、現在の西口広場前にあるループ車路となった駐車場出入り口をスバルビル跡地に移設するほか、西口広場前の青梅街道と甲州街道との通過動線も変更し、歩行者空間を拡大する。多くの人でにぎわいを見せる東口駅前広場も、駅とまちを融合する「歩行者回遊広場」の創造を目指して整備を進めていく。

 新宿駅東口と西口をつなぐ通路の整備も、回遊性向上には欠かせない。新宿駅東西自由地下通路が工事着手から約8年の歳月を経て20年7月から開通している。今後はさらに東西移動の利便性を高めるため、46年度の完成に向けて線路上空に東西デッキの新設を計画する。


■地下歩行者通路も計画
 日本最大の歓楽街である歌舞伎町への動線を担う北口では、新宿東口から西武新宿駅までの地下をつなぎ、まちの回遊性を高める地下歩行者通路の整備も計画している。23年4月には東急と東急レクリエーションが手掛けた地下5階地上48階の高さ約225mを誇る「東急歌舞伎町タワー」が開業した。ホテルや劇場、映画館、店舗などを備えた多様な大衆娯楽文化を発信する拠点として注目を集めており、北口エリアの回遊性の向上は、歌舞伎町に一段とにぎわいをもたらしている。

 新宿駅周辺の回遊性向上とともに、周辺地区の開発動向も気になるところだ。伊勢丹新宿本店が象徴的な新宿三丁目は、23年に新宿三丁目駅周辺のまちづくりの誘導方針を策定した。新たな出会いと体験の場となる、歩いて楽しい交流拠点「新宿追分」を将来像として描き、歩行者優先のまちづくりなどを重点に置く。新宿三丁目駅周辺を目的地として流入する車両の段階的な抑制のほか、集約駐車場・路外共同荷さばき場の確保、路肩空間の柔軟な活用など人中心の回遊性の高い整備を計画する。

 高層ビルが林立する西新宿地区でも開発計画が進行する。同地区も築30~50年が経過した建物が多く分布し、更新期を迎えている。広大な公開空地などが活用されていないといった課題もあり、23年に「西新宿地区再整備方針」が策定された。都庁中心に周辺街路と新宿中央公園が一体となった空間の整備や4号街路、沿道空間を一体的に再編した「西新宿グランドモール」の形成など新しい西新宿地区を発信する。



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら

【公式ブログ】ほかの記事はこちらから